No.169 ページ35
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「恵林ちゃ〜ん、貸して〜」と修也にフルートを取られた恵林は、手の行き場に困ってスカートの裾を握った。
恵林と中村の首筋には汗が滲んでいる。対照的に修也はどこか涼しそうだ。
修也は廊下の横幅に気をつけながらフルートを構えると、他人の物だというのに遠慮なく吹き始める。
以前中村の家で美江と共に楽器練習をした時もそうだったことを思い出して、その軽快な音色を素直に楽しむことにした。
修也も修也でフルートを楽しんでいるようで、「懐かしいなあ、やっぱりうちにも置こうかな」とその銀色の艶めかしい菅をなぞっていた。
蒸し暑い廊下を抜け階段を上がると、音楽室から「恵林先輩！」とメイが飛び出してきた。
「メ、メイちゃん」と心臓を高鳴らせた恵林は、冷や汗が吹き出しそうになりながらも彼女の元へ向かう。
「中村先生に聞きました！私のこと、別のソロに推薦してくれたって！」
「え、ええ！？」
恵林はバッと修也の顔を見上げた。彼は全く気にとめずにフルートを恵林に押し付けて音楽室に入っていくと、取り残された恵林の肩を「そうなんだよ〜」と代わりに中村が抱きよせた。
「恵林ったら、ずっとメイちゃんに似合うソロがある！って聞かなくてね〜〜。
もし良かったら、引き受けてあげて？」
中村は無駄に良い顔でにっこりとメイに笑いかける。
メイはというと一瞬動揺したように顔を赤らめて、「も、勿論です！」と返事をした。
「恵林！！」
そこに大きな声とともに横の準備室から美江がやってきた。
「心配したのよ！あなたがいない間大変だったんだから！」と美江は物凄い剣幕でまくし立てる。
「さ、もう挨拶するから早く来てちょうだい！」
恵林は流されるように美江に背中を押されて音楽室に入ると、もうそんな時間だったのかと時計を眺めてフルートパートの元まで向かった。
クーラーが効いて涼しい中、何やら随分賑わっている。
中心にいるのは やはり修也で、他の部員と一緒になってピアノを連弾しているようだ。
楽器なら本当に何でも出来ちゃうのか、と恵林は関心した。
苦手なことに代わりはないが、それでも多くの人の目を引いてしまうのは修也の持ちうる人柄や才能なお陰だろう。
足りない分を自分の力で余裕で補えてしまう、そういう彼のような人を天才と呼ぶのだ。
恵林はぼんやりそんな事を考えながら、美江の挨拶の掛け声に耳を傾けた。
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えりんぎ※息を吸う(プロフ) - そちゃさん» ゎゎゎ…いっぱい書いていただいてありがとうございます！伏線回収にそろそろ走りますよー！！！！！お楽しみに… (2022年2月13日 0時) (
レス) id: 5e55bdde31 (このIDを非表示/違反報告)
そちゃ(プロフ) - 投稿お疲れ様です！！！中村家激推し回でしたね()個人的に和葉ちゃんの天然可愛さが尊すぎて最高でした.....!!!桐ヶ谷くんの話とかえりんの話とかしーくんの話も気になることが増えて次巻がとっても楽しみです🎶 (2022年2月13日 0時) (レス) id: bf330b1b47 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えりんぎ※息を吸う | 作成日時：2022年2月10日 8時
