No.164 ページ29
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「じゃあ紫苑ならどうする？」
修也は背中で指を組んで、弟に笑いかけた。
「俺なら、メイちゃんに別の箇所のソロをお願いするね。メイちゃんの音にピッタリな、一際目立つところの。」
中村は間髪入れずに答えると、「どうしてそうしない？」と兄に問いかける。
少し考えればわかる事だ、ましてや賢い修也が気づかないなんてことはない。メイの音だって必ず必要な場所がある。そこに割り振って不公平を無くせばいいものを、彼はなぜそれをしないのだろうか。
「ああ…」と修也は遠くを見るような様子で口を開いた。
「そうすれば、恵林ちゃんは納得するの？」
いきなり話を振られた恵林は「えっ！」と驚きながら美江に助けを求める視線を送った。
しかし美江も恵林の返事を待っているようで、じっと黙ってこちらを見ている。
「…その、納得というか…まあ、はい。」
観念して頷いた恵林に「そう。」と修也が微笑んだ。
「結局君は、嫌われたくないだけだろう？」
サーっと血の気が引いていくのが分かる。
恵林は「え…」と中村の背中から修也の表情を見やった。彼は未だにっこりと笑いながら恵林を見下ろしている。
「ソロを吹こうが吹かまいが、どうでもいい。君が恐れているのは、メイちゃんから嫌われること。」
「でしょ？」と修也が首を傾げた。
見兼ねた中村は「ねえ」と修也に詰め寄るが、彼は弟には全く反応せず、中村を退けて恵林のすぐ目の前までやってきた。
「さっきも言ったよね、集中して？
確かに君はフルートパートの中で一番下手くそ。どうしてか分かる？演奏より人間関係に気を取られ過ぎてるからだよ。」
修也の人差し指がコツンと恵林の額を突く。
恵林は目の前の背の高い男に、恐怖で泣き出しそうになりながら動けずにいた。
「今の僕の仕事は、君たちに最優秀賞を取ってもらうことだから言うけど、あんまり身が入らないようなら出てってもらうよ。」
修也はケタケタ笑って恵林から離れると、「メイちゃんを呼んでこよう」と言って音楽室から出ていってしまった。
修也の姿が見えなくなると、ぷつんと糸が切れたかのように恵林は膝から崩れ落ちた。
「大丈夫？」と中村と美江が恵林の前にしゃがみこみ、俯いたままの彼女の様子を伺う。
恵林は「私、あの人ダメだ」と震える腕でフルートを抱いた。
「…大人げないね、ごめんね」
中村はそんな兄に代わって、肩身が狭そうに謝った。
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えりんぎ※息を吸う(プロフ) - そちゃさん» ゎゎゎ…いっぱい書いていただいてありがとうございます！伏線回収にそろそろ走りますよー！！！！！お楽しみに… (2022年2月13日 0時) (
レス) id: 5e55bdde31 (このIDを非表示/違反報告)
そちゃ(プロフ) - 投稿お疲れ様です！！！中村家激推し回でしたね()個人的に和葉ちゃんの天然可愛さが尊すぎて最高でした.....!!!桐ヶ谷くんの話とかえりんの話とかしーくんの話も気になることが増えて次巻がとっても楽しみです🎶 (2022年2月13日 0時) (レス) id: bf330b1b47 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えりんぎ※息を吸う | 作成日時：2022年2月10日 8時
