No.154 ページ17
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「ありがとう。でもね、そう言ってるうちは恵林の実力が足りていない証拠よ。」と美江は気取るようにそう言って鼻をツンと高く上げる。
恵林はムッとして「なんでだよ！」とツッコミを入れる。美江はなんだか嬉しそうに、「修也さんが私にダメ出しをしたのは、私ならもっと良い演奏ができると期待してくれているからよ。」と答えた。
「じゃあ何さ。修也さんは私には期待してないからダメ出ししないの？」
「それは違うわ」と美江は振り返った。
「恵林の演奏は、恵林が持ちうる“今現在の”実力がちゃんと出せていたってこと。」
「修也さんはできないことを強要する人じゃない。だけど、できることをしない人には厳しいのよ。」と付け足した美江。
確かに、あの時以上に上手く吹くことはほぼ不可能に近い。なんせ、初めて吹いたのだから。
もしあの時何度もやり直しをさせられていたとして、恵林の演奏は大して変わっていなかっただろう。
修也は恵林がこれ以上上手く吹くことができないことを理解していたのだ。
しかし、ならなおさら恵林よりメイの方が良かったのではないだろうか。
どうして修也は、メイを下手くそだと罵ったのだろうか。
疑問だけがモヤモヤと残る中、美江はそれに全く気づいていない様子で続けた。
「それに、中村のピアノが聴けて私は嬉しかった。」
その言葉に反応して、恵林は「知らなかったよ！しーくんがピアノできるなんて。」と驚いたように答える。
「そうよね。彼、ピアノ嫌いだもの。」と美江は寂しげな表情を浮かべた。
「随分前だけど、県の子供向け定期演奏会で毎回入賞していたのよ。私はそれをいつも家族と聴きに行っていた。」
「う、氏橋とも一緒にね！」と付け加え、何故か少々顔を赤らめる美江。恵林は「そうなんだ…」と漠然と話を聞いていた。
「私も小さい頃から音楽が好きだから…というか、ピアノをずっと習っていたから、中村の家に行ったら一目散に彼にピアノを弾かせてたわ。」
美江は懐かしげに遠くを見つめる。聞いている限りでは、もうそんな日々は送れていないようだ。
「でも私はいくら練習しても演奏会では発表できなかったし、中村にピアノを弾かせておいて、その横で悔しくて泣きわめいたこともあったから…」
「だから、中村は私の前では滅多に弾かなくなった」と、目を伏せる美江。
「美江のせいじゃないよ！」としか声をかけられなかった恵林は、「ありがとう」と儚く笑う美江に情けなくなった。
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えりんぎ※息を吸う(プロフ) - そちゃさん» ゎゎゎ…いっぱい書いていただいてありがとうございます！伏線回収にそろそろ走りますよー！！！！！お楽しみに… (2022年2月13日 0時) (
レス) id: 5e55bdde31 (このIDを非表示/違反報告)
そちゃ(プロフ) - 投稿お疲れ様です！！！中村家激推し回でしたね()個人的に和葉ちゃんの天然可愛さが尊すぎて最高でした.....!!!桐ヶ谷くんの話とかえりんの話とかしーくんの話も気になることが増えて次巻がとっても楽しみです🎶 (2022年2月13日 0時) (レス) id: bf330b1b47 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えりんぎ※息を吸う | 作成日時：2022年2月10日 8時
