No.151 ページ14
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“いつも風 巡り会う空”にはピアノパートは存在しない。
修也がアレンジで独自に伴奏を用意したものだが、本来なら曲を勝手に改変してはならない決まりである。
しかし、修也は一流音楽家の子息。
作曲者本人に改変の許諾を得ることなど容易いものだった。
「ねえねえ、もっかい弾いて！」と期待の眼差しを受ける中村。
実は楽器に触れることすら毛嫌いしていた彼にとっては、今ここにいること自体が苦痛であった。
けれど近くには恵林がいる。
そして＿＿＿＿…兄も。
中村は断ることなく「いいよ〜」と快く返事をすると、修也お手製の譜面をもう一度開いて席に着いた。
ペダルを軽く踏む。
細い指先は鍵盤をそっと撫で、そして、力強く押した。
周りの生徒たちが皆ぞろぞろと集まってくる。ピアノには、どの楽器にも持ち合わせていない、人の目を引きつける力があるのを中村はよく知っている。
その期待を裏切ってはならない。
他のどの楽器が音を外そうがミスをしようが、ピアノだけは、決してブレてはならないのだ。
ピアノとは、そういう楽器なのだ。
中村は幼い頃にそう父親から強く教わっていた。
間違える度にぶたれた頬が今でも痛み、間違える度に浴びせられた怒声が今でも響く。
英才教育とは良く言ったもので、中村にとってピアノを覚えることは、身を守ることと同じであった。
嫌でも弾けるようになったピアノを好きになんてなれない。それでも今鍵盤を鳴らすのは、目の前にいる実の兄が機嫌を損ねた時、父親のように豹変するのではないかと密かに恐れていたからだ。
弾き終わって、何事も無く無事に済んだことにホッとした中村はまず先に兄の様子を確認した。
兄はいつも通りにっこりと笑みを浮かべて拍手している。
「すごい！」と嬉しそうに女子生徒が中村を褒めた。
気が付かないうちに随分聴衆が増えていたみたいで、その中には美江の姿もある。
結局その日の部活の時間は、とんでもない兄弟がやってきたぞと大盛り上がりで、二人の話でもちきりだった。
特に後輩の二年生や、合奏が終わって合流した一年生の部員たちは中村紫苑の悪い噂を知らない生徒も多く、顔のいい美少年がピアノを弾いている！と、主に女子生徒の間で中村は人気者になっていた。
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えりんぎ※息を吸う(プロフ) - そちゃさん» ゎゎゎ…いっぱい書いていただいてありがとうございます！伏線回収にそろそろ走りますよー！！！！！お楽しみに… (2022年2月13日 0時) (
レス) id: 5e55bdde31 (このIDを非表示/違反報告)
そちゃ(プロフ) - 投稿お疲れ様です！！！中村家激推し回でしたね()個人的に和葉ちゃんの天然可愛さが尊すぎて最高でした.....!!!桐ヶ谷くんの話とかえりんの話とかしーくんの話も気になることが増えて次巻がとっても楽しみです🎶 (2022年2月13日 0時) (レス) id: bf330b1b47 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えりんぎ※息を吸う | 作成日時：2022年2月10日 8時
