No.149 ページ12
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どうして顧問も口を挟まなかったのだろう。
恵林はモヤモヤしながら自分の席に戻ってきた。
そんな恵林を待ち構えていたかのように修也は「恵林ちゃん、ソロパートお願いね」と笑いかける。
メイは信じられないといった顔で恵林を見つめた。
「…あの、修也さん。ソロパートはメイちゃんってもう決まっていて、それはオーディションで決めたことだから…」
「だから、何？」と修也が微笑む。
恵林はゾッとしてそれ以上なにも言えなくなった。
メイは突然譜面を片し始めた。
それを心配してマヤやハナが彼女を呼び止めるが、どうやらメイは涙を必死に堪えているようで、何も言わずに荷物を持って準備室へと消えてしまった。
ひどい。
恵林は、素直にそう思った。
「紫苑、バスクラ一小節目。」
修也はそう言ってメトロノームをセットすると、中村には目もくれずに手元のスコアを眺める。
中村は中村で返事もせずに鍵盤蓋を開けると、椅子に座って譜面台に置かれたスコアに一度目を通した。
そして、右手だけを鍵盤に乗せ、バスクラリネットの初めの一小節目をピアノで弾いてみせた。
「バスクラちゃん、おっけ〜？」
バスクラリネットは一人しかいない。
恵林より一つ年下のその女子生徒は「はい…！」と緊迫した様子で頷いた。
先程のメイとの口論を見て、どこか修也に怯えているようだ。
「30秒あげるからピアノ、楽譜に目を通して」
「俺、吹部じゃないんだけど〜？」と、その場で初めて中村が口を開いた。
「今すぐ完璧に弾けなきゃ意味が無い。紫苑ならできるよね？」
彼らが兄弟であることに薄々気づき始めた部員たち。
恵林と同じ学年の生徒は、中村の悪印象のせいか「うそ…」と顔を顰めていた。
顧問は依然として黙って音楽室の端っこに立っている。
確か以前中村から両親が音楽家であることを聞いたことがあったが、兄がバイオリンを弾くように、中村もピアノが弾けるのだろうか？
今まで一度もそんな噂を耳にしたことが無い恵林にとっては、信じ難い話だ。
30秒経ったのか、修也は「はい」と頷いて指揮棒を掲げたがすぐに「遅〜い」と言って腕を下げてしまった。
「指揮者をよく見て、気持ちを切り替えて。指揮棒が上がったらそれに合わせて楽器を構える。」
「はい！」と、部員を代表するように美江が返事をした。他の生徒も彼女に続いて声を上げるが、全く元気がない。
それもそのはず、皆すっかり修也が恐ろしくて堪らなくなっていた。
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えりんぎ※息を吸う(プロフ) - そちゃさん» ゎゎゎ…いっぱい書いていただいてありがとうございます！伏線回収にそろそろ走りますよー！！！！！お楽しみに… (2022年2月13日 0時) (
レス) id: 5e55bdde31 (このIDを非表示/違反報告)
そちゃ(プロフ) - 投稿お疲れ様です！！！中村家激推し回でしたね()個人的に和葉ちゃんの天然可愛さが尊すぎて最高でした.....!!!桐ヶ谷くんの話とかえりんの話とかしーくんの話も気になることが増えて次巻がとっても楽しみです🎶 (2022年2月13日 0時) (レス) id: bf330b1b47 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えりんぎ※息を吸う | 作成日時：2022年2月10日 8時
