No.140 ページ2
.
「氏橋!」
美江は氏橋の問いかけに答えることなく、代わりに彼の名を大声で呼んだ。
「な、なんだッ!いきなり!」
「桐ヶ谷なんてそのうち元に戻るんだから、気にしなくていいのよ!」
怒ったように唇をへの字に曲げ、目をつり上げる美江。氏橋は一瞬驚いたが、「何故桐ヶ谷が出てくるんだ!」と負けじと声を荒らげた。
「分かるわよ、そのくらい!テストが終わってからずーっと変よ!」
ムッとする美江に氏橋は困惑する。まさかバレていたなんて…。
「そうそう。答えの出ないことに悩んでる時間って、無駄じゃない?」と爪をいじる中村。
幼なじみの二人がそう言っているのだ。きっとそうなのだろう。
昔から、二人が味方にいると心強い。
「だよな。」と、氏橋は小さく呟いて微笑んだ。
「師匠のアレは今に始まったことじゃないでしょ。それよりそれより…
そうちゃんは美江ちゃんと、ジェンカ踊るのーっ!?」
「ゥエッ!?」
氏橋から情けない声が出た。
和葉はニヤニヤしながら氏橋と美江の顔を交互に見やる。
氏橋は爆速に高鳴る心臓を抑えながら恐る恐る美江に顔を向けた。
美江は顔も赤めることなく不機嫌な表情のまま、氏橋には目もくれないで口を開く。
「桐ヶ谷に振り回される程度のへなちょことは、踊ってなんかやらないわ!」
「そ、そんなぁ!」
「宮野!俺が悪かったッ!だから俺とも踊ってくれよぉ……」と今にも泣き出しそうな顔で美江に縋り付く氏橋。微かに横に伸びた口元を隠すように、美江はしおりを手に持って眺めた。
「うわ〜、宮野ちゃんコワ〜イ。」
「なによ!」と怒られた中村はケラケラ笑って袖を捲る。
氏橋が元気になってよかったと、口には出さずとも班員の誰もがそう思っていた。
.
14人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
えりんぎ※息を吸う(プロフ) - そちゃさん» ゎゎゎ…いっぱい書いていただいてありがとうございます!伏線回収にそろそろ走りますよー!!!!!お楽しみに… (2022年2月13日 0時) (レス) id: 5e55bdde31 (このIDを非表示/違反報告)
そちゃ(プロフ) - 投稿お疲れ様です!!!中村家激推し回でしたね()個人的に和葉ちゃんの天然可愛さが尊すぎて最高でした.....!!!桐ヶ谷くんの話とかえりんの話とかしーくんの話も気になることが増えて次巻がとっても楽しみです🎶 (2022年2月13日 0時) (レス) id: bf330b1b47 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:えりんぎ※息を吸う | 作成日時:2022年2月10日 8時