気がかり ページ1
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No side
「…なんでもない」
遠くから生徒の騒ぐ声が微かに聞こえた。
そんな中、一階の薄暗い廊下で立ち尽くした少年は、目の前で俯く友人を不安げに見つめる。
「＿＿＿ッ！おいッ！桐ヶ谷！」
会議室から飛び出していった桐ヶ谷の背中を、氏橋は目で追った。
足が動かなかったのは、彼にかける言葉が見つからなかったからだ。
困った顔をして、伊藤先生がやってきた。
「一体何があったの？あなた達…」
「いや、俺は…何も…」
言いかけてやめたのも、氏橋には何もしていないと言いきれる自信が無かったからだ。
＿＿＿＿…一体、彼はどうしてしまったのだろうか。
「ちょっと氏橋！」
「痛ッ！」
バコン！と音がして、氏橋の頭に丸まったノートが乗っかった。
半袖のセーラー服を身にまとった美江が、正面の席から彼の頭を引っ叩いたようだった。
「ずーっとぼんやりしちゃって！
飯盒炊飯の役割決めはどうなったの！」
「…あ、ああ、そうだった。すまん。」
氏橋は頭をかきながら手元の分厚いしおりを捲る。
七月に入り、三年生は夏休み明けの修学旅行に向けて準備を始めていた。
五、六時限目はクラス活動で、自由に組まれた四人一組の班の中、各々の役割を決めなければならなかった。
氏橋の班には彼の他に、美江、中村、和葉が属している。
そして、氏橋が今最も気にしている少年＿＿＿桐ヶ谷葵はというと、恵林とアイン、そして里奈の四人で固まっていた。
廊下の窓から生暖かい風が入ってくる。
教室の入口付近の席に座っていた氏橋の額に、ほんのりと汗が滲んでいた。
……あの日から一度も晩餐会に顔を出さなくなった桐ヶ谷。
話しかける勇気もなく時間だけが過ぎていく。こうして見てみると普段と変わらない彼の様子に、氏橋は逆に不安になった。
「じゃあ俺、野菜を切ろうかな〜」
氏橋の考えをかき消すように、隣で中村が笑った。
ワイシャツから覗く白い腕がピンと伸びる。大きく欠伸をする中村に、「わかった」と氏橋は頷いてしおりに彼の名前を記入した。
「あたしカレー粉溶かす！」と元気な和葉。
2泊3日の修学旅行。
一日目の宿泊先はキャンプ場で、夜は班ごとにカレーを作って食べることになっている。
和葉的にはその後のキャンプファイヤーに思いを馳せており、ジェンカやマイムマイムで「王子様」と踊ることを夢見ていた。
「宮野はどうする？」と、氏橋は和葉の要望を聞いた後にそう言って顔を上げた。
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えりんぎ※息を吸う(プロフ) - そちゃさん» ゎゎゎ…いっぱい書いていただいてありがとうございます！伏線回収にそろそろ走りますよー！！！！！お楽しみに… (2022年2月13日 0時) (
レス) id: 5e55bdde31 (このIDを非表示/違反報告)
そちゃ(プロフ) - 投稿お疲れ様です！！！中村家激推し回でしたね()個人的に和葉ちゃんの天然可愛さが尊すぎて最高でした.....!!!桐ヶ谷くんの話とかえりんの話とかしーくんの話も気になることが増えて次巻がとっても楽しみです🎶 (2022年2月13日 0時) (レス) id: bf330b1b47 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えりんぎ※息を吸う | 作成日時：2022年2月10日 8時
