今夜、晩餐は学校で。【14】

No.459 ページ17

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「本当に良いんだな？」


翌週の頭。
騒がしい教室の中で、氏橋と桐ヶ谷だけは後方のロッカーにもたれ掛かりながらその場の様子を眺めていた。

桐ヶ谷から先日の作戦会議について聞かされた氏橋は、晩餐会を部活動にするという提案を再度念入りに桐ヶ谷に尋ねる。

「うん。みんなの意見も聞きながら決めた。晩餐会を部活動にする。」

そう言い切った桐ヶ谷の瞳が静かに、そして強く揺れた。
どうやら氏橋の提案を可決したようだ。


氏橋はそれに安堵しながら、「なら次にすることは伊藤寿子を引き入れることだ。」と慌ただしい担任の背中を見据える。

担任である伊藤先生を正式に部活の顧問にするため、これまで考えてきた氏橋や桐ヶ谷の意を包み隠さず伝えに行くということだ。

「上手くいくとは限らないが、俺は生徒会長だからな。お前や恵林が話しに行くより成功率もあがるだろう。」

桐ヶ谷はムッとするが、確かにその通りである。
全校生徒代表のお願いなら耳を貸すかもしれない。
それに、自分たちがどれだけ真剣に話をしに来たのかも理解してくれるかもしれない。

「そうだね」と珍しく素直に肯定した桐ヶ谷に多少なりとも驚きながら、氏橋はわざとらしい咳払いをした。

「で、では伊藤先生との交渉対談はいつ決行する？」

桐ヶ谷は考える。

「明後日の昼休み。」

声のトーンを一切変えず、ただぼんやりと教室を見渡す桐ヶ谷に氏橋は「なぜ明後日なんだ？」と問いかけた。

「明後日の水曜日は長昼だからね。
人って、お腹が満たされた時が一番機嫌がいいんだ。上手くいく可能性が爆上がりだよ。」

長昼とは、長い昼休みのことだ。
北見中学校には、月一で水曜日に長昼が存在する。

普通なら昼休みのあとは掃除があるが、その日だけは掃除の時間も休み時間となるのだ。

ちょうど明後日の長昼がある水曜日。
桐ヶ谷はその日を狙っているようで、その意図を理解して「そうか。」と氏橋は頷いた。





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