No.269 ページ5
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「おつかれー！楽しかった？
はい、お兄ちゃんの上着」
「ああ……ありがとうございます…」
げっそりしている中村に、先程の係員が
上着と称したラッシュガードを返してきた。
「すっげー楽しかった！
けど、しーくんの腕に
潰されるかと思ったぞ…」
「え？ああ、ごめん…」
中村、ウォータースライダーなど
「断じて」怖くはないのだが
少々力みすぎていたようだ。
なんせ、めちゃくちゃ速い上に
斜面が急。そして何より距離が長すぎる。
それにトンネルだったため外が見えない。
まだ終わらないのかと心の中で嘆きながら
アインの体を締め上げてしまった。
終始ゲラゲラ楽しそうに笑っていたアインを
じっと横目で見ながら深くため息をつく。
「次からはちょっと優しいのにしてね…」
「おう！怖いのに付き合わせて悪かったな！」
「いや怖くないけどね」
中村は即座に否定しながら、近くにあった
プールに入る。
ゆったりと大きな、深さも割とあるプールだ。
水面が中村の顎をかする。
「あ、これアイン大丈夫かな…」
「うぉごぼっ」
言ってるそばから、身長の低いアインが
沈みかけている。
中村は慌ててアインを引き上げた。
「ははっ、大丈夫？アイン」
「くっそー！浮いてれば大丈夫だろ！」
そういうや否や、ラッコのように
上向きになって、すいーっと泳いで
いってしまった。
炎天下の中、なんとなく水中に潜って
中村はひとりでぼーっとする。
友達とプールなんて幼稚園以来なのでは。
ゴーグルのおかげで、視界がクリアに見える
誰かの足の肉がぶるぶると、スローモーション
のように動いていて面白い。
そんなどうでもいいことを思っては
ひとりでくすくすと笑みを零した。
息も続かなくなり、水面に顔を出す。
そういえば、アインは＿＿＿＿＿
「っ！」
足をくすぐられた。
驚いて再度潜ってみれば、
そこにはいつの間にやらアインの姿がある。
ニヤついて逃げる彼を見て、同じように中村は
笑いながらアインの体を捕まえようと
泳ぎ出す。
ただ、アインの運動神経は常人には
到底並べないレベルなので、結局中村の体力が
先に尽きた。
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作者名：えりんぎ※息を吸う | 作成日時：2019年12月22日 18時
