No.279 ページ19
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「倉庫の鍵、空いててよかったな！」
「ね〜」
二人がかりで、何重にも折った
巨大なフライシートを持ち運ぶ。
歩く自分の影が長い。
中村とアインは汗ばんで張り付くTシャツを
無視して校庭を突き進んだ。
ふと、プールを囲う柵の前に人影が見える。
2、3人。華やかな衣服を身にまとって
いるようだが……。
「あれ、三城ちゃんたちだね」
「やっぱりか！」
2人は駆け出す。
「おーい！里奈ー！」
くるりと黄色い浴衣の少女が振り返り、
嬉しそうに手を振った。
手の内でフライシートがガサガサと揺れる。
「もう！プールにいるって言うから
来てみたのに誰もいないじゃない！」
「ごめんごめん、これ持ってきてたんだよ〜」
中村は ふん、と鼻を鳴らす美江に
フライシートを見せた。
「でも、どうするの…？
この柵には鍵がかかってるよ……」
「内側からじゃないと開かない」
里奈が不安げにアインを見上げる。
その横で和葉が柵の中を指さした。
プールサイドを囲う柵は
緑色のネットフェンスで、高さも2ｍ以上ある
これでは開けられそうにない。
行き詰まった中、アインが美江に
「ちょっとこれ持ってて」と自分の持っていた
分のフライシートを押し付けた。
「いいけど、何をするつもり？」
「まあ見てろって！」
怪訝な顔つきになる四人。
アインは得意げに口角を上げて屈伸しだした。
それから少し遠くに移動して
「離れて！」と投げかける。
みんながわけも分からず柵から距離を置くと
アインはぐっと腰の位置を低くして
足首に力を入れた。
「まさか…」
中村はなんとなく察したように笑う。
「行くぞー！見てろよーっ！
うぉおお！」
次の瞬間、アインが駆け出した。
驚く美江や和葉の間を一瞬ですり抜けて
柵に飛びつく
カシャン！と柵の大きな音がして、
アインがその状態のまま上へ上へと登っていく
そしてなんと、自分より2倍ほど背の高い柵を
難なく飛び越えたのだ。
「よっ！」
アインは柵の内側、プールサイドに着地する。
それから鍵を開けて外で呆気に取られている
みんなを招き入れた。
「アイン、すごい……！」
「へへ！だろ？」
里奈は嬉しそうにぱちぱちと手を叩く。
これには美江も驚きを隠せず、
「すごかったわ……」と感嘆の声を漏らした。
「さあ！チャチャッとやっちゃおうぜ！
名付けて、"恵林Fly fall大作戦"！」
アインは力強い笑顔で拳を握る。
「晩餐会の、始まりだ！」
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作者名：えりんぎ※息を吸う | 作成日時：2019年12月22日 18時
