No.199 ページ42
.
No side
バトンは宮野美江から高塚里奈へと託された。
「里奈っ！」
「うん…っ！」
里奈は美江から受け取った黄色いバトンを
ぎゅっと握りしめ、走る。
少し前にはA組が。
届きそうで届かない距離を、ずっと走っていた。
しかし、二着をキープすることも大事。
里奈は後ろに気をつけながら、
必死に前へと突き進んだ。
「氏橋くんっ！」
「任せておけッ！」
バトンは、氏橋に回る。
和葉の分まで走る氏橋。
足の遅さなんてのは自覚している。
その上で、氏橋はチームに貢献したかった。
前を走る者との差が開いていくのがわかる。
後ろから乱れた呼吸が聞こえるのがわかる。
砂利を蹴る音、風を切る音。
しかし、負けてはいけない。
やらねばならないのだ。
「うぉおおおおおぉッ
2年D組ッ氏橋颯太ッ！！ここに見参ッ！！」
「生徒会長が雄叫び上げてるぞ！！」
「なんだなんだ！」
氏橋は喉を絞って鳴き声とも言えるような
声を上げながら走る。
その時だった。
「A組走者、転倒しました」
そんな放送が流れた。
氏橋の目の前で、先程煽ってきた相手が
倒れたのだ。
氏橋は枯れた喉の奥から途切れ途切れの息を
漏らし、ただ静かに、地面に突っ伏す少年を
横切った。
これはチャンスだ。
氏橋は思った。
「中村ッ！」
「いいね〜そうちゃん！
あとは任せて！」
「ああ！お前にこのバトンを託すッ」
中村はバトンの端をしっかりと握った。
走り際、隣でA組の生徒が「ふざけんなよお前！」
と転んだ少年に対して怒号をあげていた。
「はは、仲間にそんなこと言うんだ。
そんなんじゃ、俺達には勝てないね〜」
中村は走る。
前にはもう誰もいない。
自分の使命はアインにバトンを渡すこと。
このチームを、勝利に導くこと。
「待て！」
後方で声がした。
A組が巻き上げてきている。
「待てって言われると待ちたくなくなるよね〜」
なんて抜かしながら
声援の中を中村は駆け抜ける。
あともう少し、もう少しだ。
「しーくん！パス！」
「うんっ_______________ぅ、」
「D組走者、転倒しました！」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 8人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
えりんぎ※息を吸う(プロフ) - ぴえんさん» あはばばばありがとうございますありがとうありがとう……嬉しいですこれからどんどん成長していくのでぜひ次回作も読んでくださるとはっぴーです！！() (2020年11月4日 20時) (
レス) id: 5e55bdde31 (このIDを非表示/違反報告)
ぴえん - 一次小説って初めてみたんですけど語彙力すごいしやばいです！！尊敬します (2020年11月4日 19時) (レス) id: 0149edd4b5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：えりんぎ※息を吸う | 作成日時：2019年9月12日 16時
