No.190 ページ33
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葵が走り出した。
私は立ち上がってスタート地点まで移動しながら
彼の背を見つめる。
自分より身長の低い人かぁ。
もう100%アインではないかな。そんな気がする。
いやぁ可愛そうだなあ2回連続で走らされるなんて。
ご愁傷さま〜
お、葵が紙の内容を確認しているぞ。
だが、何故か一瞬体を停止させて他の走者の
方へ目を向け始めた。
ん？どうしたんだろう。
それからバッと体の向きを変えて
物凄い形相でこちらへ向かってくると
息切れ状態で「畑中さん！」と叫ぶ。
え、私？
「ちょちょ！確かに私はあんたより背低いけど
なんで私なの！？てか私次走るんだけど！」
「ハメられた！」
「は、はあ！？」
私は葵に手首を強く掴まれて、
ほぼ引きずられる形で走った。
チラリと葵の顔を伺うと、今までに無いほど
焦ったような、なんだか悔しそうな表情で
振り返ることなく足を振り切っている。
ひゅーひゅーなんて同級生の方から
声が上がっているが、そんなどころじゃない。
一体何があったんだ！
「葵、やったじゃん！課題は数学の問題1問だよ！
得意分野じゃん！」
私は何かしらの課題が書かれている紙を
1枚引いて、内容を確認して葵へ笑いかける。
が。
「葵？」
「…え？」
「だ、だから、数学の問題だよ！
ちょちょっと解いて早くゴールしようよ！」
「あ、ああ。」
葵がぼーっとしている。
すぐにわかった。
彼は連立方程式の文章題が書かれた紙を
凝視しながら、その文を目で追う。
紙を握る手が震えている。
力が入っているんだ。
呼吸もまだ整っていない。
次々にみんながゴールしていく中、
葵は完全に焦ったように紙を無言で見つめていた。
「葵、大丈夫？」
普及された鉛筆すら手に取らない。
私は、次第に不安になった。
葵は一体どうしてしまったんだろう。
まさか、解けないのか？
「無理に解かなくても、私もやる＿＿」
「＿＿＿＿＿＿っはぁ！
みかん14個！りんご10個！」
ピンポンピンポン！
役員の3年生が、手に持った百均のマルバツボタンを
押した。
この男はやり遂げた。
鉛筆など必要ないというように、
葵は、なんと連立方程式の解を
暗算でといてしまったのだ。
「……行こう」
だが、葵の表情は改善しない。
私は再度葵に手を引かれながら
なんだか歯がゆい気持ちでゴールした。
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えりんぎ※息を吸う(プロフ) - ぴえんさん» あはばばばありがとうございますありがとうありがとう……嬉しいですこれからどんどん成長していくのでぜひ次回作も読んでくださるとはっぴーです！！() (2020年11月4日 20時) (
レス) id: 5e55bdde31 (このIDを非表示/違反報告)
ぴえん - 一次小説って初めてみたんですけど語彙力すごいしやばいです！！尊敬します (2020年11月4日 19時) (レス) id: 0149edd4b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えりんぎ※息を吸う | 作成日時：2019年9月12日 16時
