No.188 ページ31
.
「次の種目は、2年生による借人競走です。」
ハウリング気味の放送が
校庭に流れ、軽快な音楽が後に続いた。
「位置について、よーい＿＿＿」
パンっ、とスターターピストルが撃たれ
最前列の6人がダッと走り出す。
男女3人ずつの30列くらいあって
私の番は最後の方だ。
みんな必死に、お題の書かれた紙を握って
「赤い服の人いますかー！」とか
「一緒に走って！」なんて友達の手を引く子も
いる。
できれば、面倒な内容のものは避けたいところだ。
「自分のことイケメンだと思う人！
いますかー！！！」
そんな中、人一倍甲高いデカい声が聞こえて
顔を上げてみれば、それは和葉であった。
紙を握った手をブンブンと高く振り回し
観客の方へと声を張り上げている。
だが、お題がお題だ。
和葉の元へと出てくる人はなかなか現れない。
それでもめげずに頑張っている和葉。
「これは、俺の出番かな〜」
後ろから、そんな声がして誰かが立ち上がった。
振り返ってみると、しーくんがズボンの砂を払って
いつものように絶えない笑みを浮かべている。
そして、今も尚懸命に声を出している和葉の方へと
駆け足で向かうと「三城ちゃ〜ん」なんて言って
和葉の腕を掴んで駆け出した。
「えっ！？し、しーくん！？」
さっきまで大声を出していたせいか
和葉は咄嗟のことに声のボリュームが
調節できていない。
テンパってるのが丸聞こえである。
当のしーくんはくすくす笑って、
こっちにも聞こえるように
「こんなにいい男がいるのに、
な〜んでこなかったの〜？」だのなんだの言って
和葉の手を引く。
「おのれ中村…ッ！
女子と手を繋いでこっちに見せつけるなんて…ッ」
次走者のそうちゃんも本音がダダ漏れだ。
しーくんと和葉は手を繋いだまま
2人で縄跳びをして笑い合いながらゴールした。
結果はビリケツであったが、二人とも楽しそうに
笑っている。
終わりよければすべてよしってやつか。
それにしても、しーくんは本当にいい所ばっか
持っていくなあ。
「位置について、よーい」
また、パンっと乾いた音がなり、
雄叫びを上げながらそうちゃんが走り出す。
同じ列に里奈もいて、紙に書かれたお題を
読んでキョロキョロと辺りを見渡した。
そして、こちらを見てなんだか顔を赤らめると
一瞬迷っていたが意を決したようにこっちへ
走ってきた。
お！なんだ！？私か！？
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 8人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
えりんぎ※息を吸う(プロフ) - ぴえんさん» あはばばばありがとうございますありがとうありがとう……嬉しいですこれからどんどん成長していくのでぜひ次回作も読んでくださるとはっぴーです！！() (2020年11月4日 20時) (
レス) id: 5e55bdde31 (このIDを非表示/違反報告)
ぴえん - 一次小説って初めてみたんですけど語彙力すごいしやばいです！！尊敬します (2020年11月4日 19時) (レス) id: 0149edd4b5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：えりんぎ※息を吸う | 作成日時：2019年9月12日 16時
