No.186 ページ28
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氏橋は、目の前で苦い顔をする男を見上げた。
今、こいつは自分になんと言った？
「……はあ？」
「だから、君と話がしたかったの。
ほら…昨日の給食の時の続き。」
桐ヶ谷は場が悪そうに頬をぽりぽりとかいて目線をそらす。
氏橋は素っ頓狂な声を漏らして、まじまじとその桐ヶ谷の顔を見入ってしまった。
「……近いんだけど」
「わ、悪い」
桐ヶ谷の拗ねたような文句を聞いて、
氏橋は1歩後ずさって焦ったように胸の前で両手を振った。
「……あのさ、ごめんね。」
桐ヶ谷はそんな氏橋をじっと観察した後、
「はあ」と大きくため息を吐いて、独り言を零すように謝る。
「な、何の話だ？」
氏橋は突然の謝罪に、困惑したように聞き返した。
「…昨日、失礼なことを言ったから。」
ドン臭い事件のことだろうか。
いやきっとそうだろう。
「気にするなよ、事実だ。」
氏橋は俯き気味にそう言う。
別に今更何か言う力も残っていないし、できれば早くその話題を変えたかった。
自分がチームの足を引っ張っている事実を、何度も何度も突きつけられたくない。
「ちがう、俺が言いたかったのは
氏橋がドン臭いってことじゃなくて」
桐ヶ谷は肩を落とす氏橋に、誤解を解くように更に声をかけた。
「…その、氏橋がいてくれなきゃ、
俺らのチームはここまで来れなかった、から。
あの……」
いつまで経っても紡がれないその言葉の続きが
気になり、氏橋は顔を上げる。
と、桐ヶ谷は意を決したような表情でぐっと喉を鳴らした。
「＿＿＿＿あり、がとう」
いつものすまし顔はどこへやら。
ふるふると力んだ表情筋と小さな声。
だけど、目線はしっかり氏橋の瞳を捕らえていて、氏橋はそれを逸らせずにいた。
「…おう、こちらこそ……。」
氏橋は今までの心のモヤモヤが吹っ飛ぶような感覚を体全体で感じながら返事をする。
少なからず驚いているのだ。
「だからいつまで経っても俺を越せないんだよ」と氏橋を蔑んでいた桐ヶ谷が、見たことの無い表情を見せているのだから。
「無理、してないか？」
「してないから。…早く帰ろ」
桐ヶ谷はサッと氏橋の横を通って前を行く。
なんだ。
自分だけ劣っていたと思っていたけど、案外この男も子供らしい所があるじゃないか。
「……桐ヶ谷。」
「なに」
氏橋はにっこりと笑って桐ヶ谷のところまで追いつくと、彼の背中をパシンと叩いた。
「明日、共に頑張ろうなッ！」
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えりんぎ※息を吸う(プロフ) - ぴえんさん» あはばばばありがとうございますありがとうありがとう……嬉しいですこれからどんどん成長していくのでぜひ次回作も読んでくださるとはっぴーです！！() (2020年11月4日 20時) (
レス) id: 5e55bdde31 (このIDを非表示/違反報告)
ぴえん - 一次小説って初めてみたんですけど語彙力すごいしやばいです！！尊敬します (2020年11月4日 19時) (レス) id: 0149edd4b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えりんぎ※息を吸う | 作成日時：2019年9月12日 16時
