No.185 ページ27
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「すみません、入りません。
もう帰ります。」
「ああ、桐ヶ谷くぅん」
塾長にピシャリと言い放って、桐ヶ谷は
氏橋を追うように外に出た。
ここで引き下がってはいけない。
何が良くてつまらない授業なんか
受けたと思っているんだ。
桐ヶ谷が話したいのは塾長ではない。
氏橋だった。
氏橋の通う塾は彼の家から
比較的近い位置にある。
だとすると、そんなに遠くへはまだ行ってなくとも
走られてしまえば既に帰宅なんてことも有り得る。
どうか追いついてくれ。
＿＿＿＿ちゃんと伝えなきゃダメだよ！
うるさい。君に言われなくても分かってる。
桐ヶ谷は脳裏でぐるぐる回る恵林の言葉に
悪態をつくように駆け出した。
リュックの中で筆箱がパカパカと音を立てる。
「氏橋！」
曲がり角を曲がって、やっと見つけたその背中に
桐ヶ谷は声をかけた。
「一緒に帰ろう」
そして、先程自分が誰かに言われたセリフを、
同じように氏橋に向けて一言伝えた。
「……桐ヶ谷」
氏橋は立ち止まって振り返る。
息の乱れた桐ヶ谷が10メートルくらい奥で
こちらをじっと見つめていた。
「なんで、塾の体験に来てくれたんだ？」
「…別に。行きたかったから。」
「……そうか。」
氏橋は静かに前を向く。
「氏橋＿＿」
「お前、俺のこと見下してるか？」
「……は？」
桐ヶ谷は歩くために振り上げた足を引っ込めた。
「桐ヶ谷、なんでうちの塾に来たんだよ。
お前より劣ってる俺を見に来たのか？
楽しかったか？」
そう言った氏橋に、桐ヶ谷は困惑しながら
頭の中でかける言葉を探した。
「別に劣ってるとか劣ってないとかどうでもいい。
そういうの、興味無いし。」
ああ、まただ。
氏橋は心の中で煮えたぎる熱いものと、
反転に冷めていく心臓を同時に感じた。
また自分だけが、意識している。
このままでは、いつまで経っても桐ヶ谷を越せない。
「…よ」
「何？」
「なら来るなよ！お前がいると俺は！
…俺は、居場所がなくなって息苦しい、惨めになるんだ！」
氏橋は振り返って感情に任せて声を荒らげた。
もうどうにでもなれ。もういいんだ。
「お前、俺のことを馬鹿にしているんだろう？」
「してないけど」
「そんなの嘘だッ、じゃあ何故＿＿＿」
「だから。」
桐ヶ谷は憤った氏橋の元へと足を進めて
彼の目の前に立ちはだかった。
「……氏橋と話がしたかったから、来た。」
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えりんぎ※息を吸う(プロフ) - ぴえんさん» あはばばばありがとうございますありがとうありがとう……嬉しいですこれからどんどん成長していくのでぜひ次回作も読んでくださるとはっぴーです！！() (2020年11月4日 20時) (
レス) id: 5e55bdde31 (このIDを非表示/違反報告)
ぴえん - 一次小説って初めてみたんですけど語彙力すごいしやばいです！！尊敬します (2020年11月4日 19時) (レス) id: 0149edd4b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えりんぎ※息を吸う | 作成日時：2019年9月12日 16時
