スイッチ2 ページ11
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「おい、突然どうしたんだッ！」
氏橋は桐ヶ谷を追って2年D組の教室に入った。
そこには、電気もつけず暑い教室の一番前の自席でノートと筆箱を取り出し、何やらせっせとそこに書き込んでいる様子の彼がいた。
「氏橋、さっきの話だけど」
桐ヶ谷はペンを止めずに続ける。
「いいよ。協力してあげる。ただし、」
突然、彼が協力的な姿勢を見せた。
随分上から目線な言い分だが、あえてそこは
口を挟まない方が正解だろう。
氏橋はそう考えて「なんだ？」と桐ヶ谷の言葉の続きを待った。
「ただし、計算でなら。」
桐ヶ谷は確かにそう言った。
だが、氏橋にはその言葉の意味がよくわからなかったので、桐ヶ谷の机のそばまで行き、彼のノートを拝見しようとする。
「……お前これ……！！
この短時間で…ッ！？」
大学ノートのその細い行線に埋め込まれる
大量の数式とその答え。
「みんなのリレーの速さの平均と
慣性を用いたベストな体の傾け方…
手足の角度、秒速の上げ方…もろもろを割り出した。」
唖然とする氏橋は、感嘆のため息を交えながら言葉をひねり出す。
「すごいな…こんな数学の使い方が…」
「数学だけじゃない。科学も入ってるよ。」
「そ、そうか…」
氏橋は驚愕していた。
まさかと思っていたが、この男はこれほどまでに頭の回転が早いのか。
そんな者と比べていた自分が、本当に恥ずかしいほどに。
だが、あんな煽りにも乗ってしまうなんて
割と単純というか、子供というか。
まあでも、そのおかげで彼のやる気を
引っ張り出すことができたのだ。
あの3年生は愚かなのだ。氏橋はそう思った。
「桐ヶ谷、何か欲しい情報とかはあるか？
そうだな…一応腐っても運営だ。
答えられる範囲でなら答えてやる。」
「じゃあ、校庭とトラックの面積。
それから、当日予定してる全競技を含んだ
総合時間も。」
「それはいいが、総合時間は
一体何に必要なんだ？」
「炎天下の日照時間を求めて
大雑把にどれだけの疲労が出るか知りたい。」
氏橋はグッと息を呑む。
ああ、もう追いつけない。この男には。
「…ああ。わかった。」
淡々と、「当たり前だろ」とでも言うように
表情を変えない桐ヶ谷を直視できない。
自分が彼に劣っているという事実を
認めるということになると思ったからだ。
だめだ。まだだ。
まだ、自分の出来ることを。
出来ることを、出来るだけ。
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えりんぎ※息を吸う(プロフ) - ぴえんさん» あはばばばありがとうございますありがとうありがとう……嬉しいですこれからどんどん成長していくのでぜひ次回作も読んでくださるとはっぴーです！！() (2020年11月4日 20時) (
レス) id: 5e55bdde31 (このIDを非表示/違反報告)
ぴえん - 一次小説って初めてみたんですけど語彙力すごいしやばいです！！尊敬します (2020年11月4日 19時) (レス) id: 0149edd4b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えりんぎ※息を吸う | 作成日時：2019年9月12日 16時
