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食事を終えて、私たちは別荘に戻って来た。
当たり前だけどもうすっかり夜なわけで、アングラードさんから貰ったどこかのホテルの付属の歯ブラシで歯を磨いたあと、私は彼に連れられて寝室らしき部屋に来ていた。
「元は物置だったからちょっと散らかってるんだけど、布団が敷ける空間はあるから安心して。」
そう言ってアングラードさんは両手で大きな布団を広げてくれた。
ちょっとホコリっぽいな…。
思わずくしゃみを連発してしまったが、アングラードさんは特にそれを気にはしなかった。
「電気はここね」
立ち上がったアングラードさんは天井からぶら下がっている電気のスイッチの紐をカチカチと引っ張る。
部屋が明るくなったり真っ暗になったりして一瞬びっくりしたが「じゃあ、おやすみ〜」とすぐに姿を消したアングラードさんの背中を見てなんだか寂しくなった。
あれ。なんだろうこの感じ…。
まるで無人島に1人取り残されたような感覚だ。
ここで、一人で寝るのか…。
私はアングラードさんが敷いてくれた布団に膝を抱えて座る。
1人になって気づいたけど、虫の声がたくさん聞こえてくる。
夏だからなのもあるけど、場所も場所だからか、聞いたこともないような鳴き声もする。
なにか動物でもいるのだろうか。
窓は全開で、どうも閉め方が分からない。
寝ている間に襲われたりでもしたらどうしよう。
でも、私はもう命なんて捨てようとしていたのに、どうして今そんなことに怯えているのだろうか。
不思議と今は、生きたいと願っている自分がいる。
窓の外に見える大海原が静かに揺れていた。
まるで、「こちらへ来てはいけないよ」と私に語りかけているようにも見えた。
今まで色んなことがあった。
今は少し、全部忘れてこの暖かい場所で休息を取ってもいいんじゃないかな。
そう思ったら自然と眠気がしてきた。
海に飛び込むなんて慣れないこともしたわけで、体はとても疲れていたのだ。
こてんと、体が傾く。
そのまま枕もない一枚の布団の上に身を委ねれば、すぐにそこは夢の中であった。
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うさ(プロフ) - 面白かったです!!続き楽しみにしてます! (2021年4月27日 21時) (レス) id: b72b4d2a41 (このIDを非表示/違反報告)
おーか(プロフ) - えりんぎ※息を吸うさん» ぴえぇぇぇぇぇぇぇぇ更新ありがとうございますぅぅぅぅぅぅぅ。これで受験勉強がんばれまふ。ぐへへへへ。ぐへっ。ぐへへへへへ。なんか。生きてる感じがしましゅ。ふへっ。ぐへへへ。 (2019年10月4日 1時) (レス) id: 59ebe514b5 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ※息を吸う(プロフ) - おーかさん» ぎゃぁぁぁぁあ今すぐ更新致しますお待ちくださいいいいいいい神様ぁぁぁぁぁ (2019年10月3日 11時) (レス) id: 5e55bdde31 (このIDを非表示/違反報告)
おーか(プロフ) - あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙。好きです。愛してます。更新頑張ってくださいぃぃぃ。海獣の子供の小説が少なすぎて自分で作ろうと考えてたけど。貴方様のような神作者さまに出会えて光栄ですぅぅぅぅぅぅ。 (2019年10月2日 19時) (レス) id: 59ebe514b5 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ※息を吸う(プロフ) - 安海さん» うわぁぁ返信遅くなってすみません携帯没収されてました!多分これから更新します!多分() (2019年9月3日 11時) (レス) id: 5e55bdde31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えりんぎ※息を吸う | 作成日時:2019年7月6日 0時