852話:真の鬼 ページ24
酒呑童子「滑稽なものだ。純血の鬼ならば、吸血衝動などありはしない。本家と、失敗作…。本当に可哀想な連中だ。真の鬼となりさえすれば、苦しまずに済むものを。」
貴方「真の鬼…?」
酒呑童子「そうだ。我ら純血の鬼の血を、一定以上注ぎ込むことで、飛躍的に力が増し、真の鬼となる。それに耐えられる者も、爪の上に乗る砂程度だ。」
貴方「純血の鬼の血を…。」
酒呑童子「土蜘蛛と大ガマの先祖とやらは、それに耐えた数少ない家元でな。本家筋は今や、あの二人しかおらん。だから我は、アイツらを純血の鬼にしてやろうと勧誘しておるところだ。」
貴方「…」
酒呑童子「なのに、土蜘蛛はお前に現を抜かす阿呆になり、大ガマは行方知れずときた。…鬼の素晴らしさを、まるで分かっていない。血も薄れてきて、この前も人間に傷つけられたと聞く。それほどまでに弱くなっておるんだ、アイツは。」
貴方「そう…。」
未来で敵対していたから、きっと大ガマも土蜘蛛も
この先酒呑童子に応えることはなかったのだろう。
貴方「さっき言ってた、血を与えなければ妖怪になるって。長い年月が必要なんでしょう?その間に吸血衝動だってある…。」
酒呑童子「鬼として道を外れたものが、元のように戻るなど容易いことではない。血を飲めば衝動が和らぎ、一時しのぎになるが、それは己を鬼へと変化させる。耐えきったものこそが、妖怪へと戻ることが出来る。」
貴方「私は、アナタの意見に賛同することはできないけれど、鬼にもきっと事情があるんだって思う…。でも、だからって土蜘蛛と大ガマを苦しめていい訳じゃない。もうやめて…!」
酒呑童子「やめろ…だと?」
貴方「!」
酒呑童子が私の胸ぐらを掴んできた。
物凄い力だ…振り解けない。
酒呑童子の爪が、ギリッと首元に刺さる。
酒呑童子「…人間に、我の血を飲ませたらどうなるんだろうな…。」
貴方「えっ…?なに…!」
酒呑童子が自身の指を噛み、しとどに血が流れる。
それを私の口目掛けて、入れようとした時だった。
酒呑童子「!」
途端、私は誰かに手を引かれ
酒呑童子から逃れることができた。
?「…人間なんて脆いものにそんなものを飲ませても、結果は分かりきっているだろう。」
貴方「…か、カルラ…?」
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ぐりーん(プロフ) - もうこのお話好きすぎますっっ!文章も素敵で読みやすいし…これからも頑張って下さい~‼︎ (2022年3月5日 7時) (レス) @page32 id: c2e222939c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:暁兔 | 作者ホームページ:
作成日時:2021年9月6日 18時