732話:諦める事に慣れるな ページ13
ーカルラsideー
人間は誰しも欲を持っている。
富豪になる、玉の輿に乗る、
優劣を決めたがるのも、欲だ。
負の欲が、他の妖怪より感じやすい僕は
人間にあまり接触してこなかった。
フミとAを除いては。
あの二人からは、そんな欲を感じなかった。
根がそういう人達なんだろう。
カルラ「……あの人間の女、良い男を手玉に取るって欲があった。……あんなの、最低だよ。」
烏天狗「……まぁ確かに、良い「気」では無かったよね。でも、良かったの?人間と仲良くなる良い機会だったのに。」
カルラ「……暫く人間は良いや。それより、Aは?」
えんら「部屋よ〜。」
烏天狗「会いに行くつもり?」
カルラ「……やっぱ、ダメかな。」
烏天狗とAがついて来ていたのは
気配で分かっていた。
多分、話までは聞こえていなかっただろうし
すぐに2人は妖魔界に戻ったみたいだから……。
ただ、今Aの気配が弱いのは
もしかしたら僕のせいかもしれないし。
土蜘蛛に妖気を移すかどうかの事でも
少し意地悪しちゃったし……。
カルラ「……僕、諦めようかな。」
烏天狗「……は?」
ポツリと呟いたけど、
本当はそんなの無理に決まってる。
諦めようかなっていうか、
諦めたいなぁ……だけど。
あー、烏天狗の気配が変わってきた。
呆れとか、怒りとか、
普段冷静なのにAが絡むと
起伏が激しくなるんだから。
えんら「ダメよ〜。そういうことは、ダメ〜。」
すると、意外にもえんらえんらがそう告げた。
えんら「諦めるなんて、いつでも出来るの〜。でも〜……後悔するわ〜。いつか絶対にね〜……。」
そういえば昔も
何か投げ出しそうになる度に
フミに「諦める事に慣れるな」って言われたっけ。
諦めることを怖がれるような
そんな真っ直ぐな心を持って欲しいって
フミはずっと言っていたなぁ…。
今まで、少し忘れてたや……。
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作者名:暁兔 | 作者ホームページ:
作成日時:2021年2月28日 23時