【学園ヘタリア】Hetalia's Conflict Ⅱ 【リメイク版】 (ページ36)

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第81話：涙ページ36

イース「彼女はとても落ち着いた人だった。一目見た時、何もかも違う彼女の容姿や考え方…強い生き方を羨ましく思った。彼女の祖国の話を聞くのが何よりの楽しみだったんだ。」

イースさんは伏せた目を少し開く。睫毛も、瞳も揺れている。その横顔は愛おしいものを思い出しているはずなのに、泣き出しそうな程悲しげだった。

イース「彼女は早くに両親を亡くした。それから、何人もの大人が彼女のために“親”になった。彼女はその“大勢の親”の死に耐えられなくて、塞ぎ込むようになった。あんなに強かった女性が弱くなる姿を、僕は見ているだけなのが辛かった。」

イースさんは「下心がなかった訳では無いけど、それをきっかけにもっと彼女を知りたいと思った。」と話した。

それから数年はお互いに忙しく、住む国も違うためすれ違い続けたそうだ。

イース「彼女に再開したのはカークランド主催の国家交流の場だった。2週間という限られた時間で、僕達は会えなかった分の時間を埋めるように傍にいたよ。一緒に踊って話をして、そうしてお互いを求めるようになった。でもキスなんてしたことは無い。ただ手を繋いで、お互いの温もりを伝えるだけ。そんな関係だったけど、僕も彼女もそれで満足だった。…愛していたんだ。」

イースさんの目から一筋、涙が零れ落ちた。ハッと息を飲む彼は、すぐに腕でそれを拭ってしまった。

イース「ごめん、泣くつもりじゃ……。」

貴方「いいえ…。泣いていいんですよ。早く彼女さんの温もりをまた感じられるように、私も祈ります。出来うることなら何でもしますから。今は思う存分泣いてください。」

イース「ありがとう…A。」

彼の背中をさすると、彼は私の空いた手をとった。繋がれた指先が熱い。イースさんはまだこんなにも彼女を想っている。私にも、こんな風に想える人はいただろうか。

全てを忘れてしまった側は、忘れられた側の苦しみなんてちっとも知らないで過ごしている。思い出して貰えないこと、1人だけ想いを背負っていること。それはどれ程の悲しみや苦痛になるだろうか。

貴方「イースさん…。話してくれてありがとうございます。私は彼女さんの代わりにはなれないですが、また何かあれば……こうして隣にいさせて下さい。」

イース「うん…、うん……傍にいて、離れないで。」

彼の腕が私の背中に回る。黒髪の彼女さんと私を重ねていたとしても、今はこのままでいたい。頭と心臓がズキズキと痛むのはどうしてだろう。