第49話：招待 ページ4
ルーカスと名乗った人は、暫くすると何かを考え込むように腕を組んだ。本当にマイペースというか……。足も痛むし、私は出来ることなら早く帰りたいのだけれど。
ノーレ「おめ、これから用は？」
貴方「え？いえ…特には。」
そう答えてハッとした。何を素直に答えているんだろう。ここは嘘でも用があると言えば良かったのに……！後悔している間に、ノーレは徐に髪についた十字架のピンを外した。
そうして、そのピンを少しいじると
電話のように耳元へと当てて何かを話し出したのだ。
まるで、誰かと会話をしているような……。
貴方「あの……ノーレ…？」
ノーレ「わりぃ、今電話中。」
貴方「あ、はい……。」
呆気なく断られた。というか、そのピンのような媒体は携帯……なの？何から何まで不思議な人だ。「じゃあな」という言葉と共に、長い睫毛が一瞬伏せられた。
思わず美しいと思ってしまうような横顔。振る舞いも落ち着いていて、漫画の世界の人みたいだ。
ノーレ「行くぞ。」
貴方「はい？」
彼に見惚れていた時、そう一言放つとノーレは私の前をスタスタと歩き始める。訳も分からないが釣られて私も歩き出す。
貴方「どちらへ行かれるんですか？」
ノーレ「俺達ん家。」
貴方「ちょっと待って下さい！？突然どうしてですか！？」
ノーレ「ん…？ああ……。おめぇが、俺と会ったはんで。」
貴方「は……？」
いや、それはそうだろうけれど……。ダメだ、全てが彼のペースに飲まれている。全く知らない人の家に連れて行かれそうなこの状況の説明を促さなければ…。
貴方「私達、今さっきそこで知り合いましたよね！？突然知らない人間を家に招くのは……。」
ノーレ「おべねぐはね。つっても、おめは覚えでねんだっけ。」
貴方「ええ……？」
またしてもよく分からない事を……。
あれ、でもそう言えば彼の弟とか言う人も
そんなことを言っていたような……？
悪そうな人にも見えないし、信じても大丈夫だよね…？
ノーレ「じゃ、その足手当するついでに、茶でも飲んでいげ。そいだば理由になるびょん。」
貴方「どうしてそれを…！」
ノーレ「見ぃばわがる。」
ノーレはすました顔でそう言うと、私の歩幅を気にしながら家まで案内してくれた。道中、あまり会話はなかった。しかし、彼の観察眼の凄さに心で感嘆していたら、存外遠い家ではないらしく、すぐに目的地に着いたのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 96人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：暁兔 | 作者ホームページ：
作成日時：2023年5月13日 22時
