第72話：呼び出し ページ27
セーシェル「そっか…。なんだか辛い恋をしてるんだね。」
リヒテン「心苦しいです…。彼女さんは事故にでも遭ってしまったのでしょうか。」
貴方「そこまではさすがに、不躾に聞けなかったよ…。」
翌日、イースさんの恋人について聞いたことを他言無用との約束の上で2人に話した。セーちゃんはあからさまに残念がっている。
セーシェル「私、もっと別の理由だと思ってた。」
リヒテン「一応聞いてみても？」
セーシェル「彼女にアプローチしても振り向いて貰えず、本気を見せるために学園まで追ってきたとか。もしくは、身分が全然違っている禁断の恋で、それでも君が好きだ！とか。」
貴方「それは少女漫画の読みすぎじゃない…？」
リヒテン「まぁ…。なんてロマンティックなんでしょう。」
2人が他の妄想も始めてしまって、一人疎外感を感じていると、廊下にイースさんの姿が見えた。珍しく友人と一緒にいるみたいだ。
セーシェル「わ！噂をすれば美男子！！」
貴方「美男子って…。」
セーシェル「エミールくんってさ、幼い顔しているし、どちらかと言うと可愛い系じゃない？それなのに予想以上に身長が高くて、顔に似合わずクールなのが女子にモテるんだって。」
リヒテン「いわゆるギャップ萌えというやつですね。」
貴方「わからん…。」
また視線をイースさんに向ける。すると、廊下の窓越しに彼がこちらを向いた。私に気付いたのかな？いや、このクラスそれなりの人数居るしそんなわけ…。
するとセーちゃんが「待って、彼こっち見てるよ！？」と騒ぎ出す。
貴方「いやいや、絶対私達の方じゃないでしょ…。」
セーシェル「え、でもなんか手招きしてるよ？」
貴方「はい？」
イースさんに目配せすると、彼は少し呆れた表情をした後に近くの女生徒に話しかけていた。その女生徒は喜びに満ちた反応を示した。そうして私たちの教室へと入ると「五十嵐さん、スティルソンくんが呼んでるよ！」と大声で叫んだのだった。
セーシェル「やっぱりAちゃんのこと見てたじゃん！いいな、私もエミールくんとお近付きになりたい。」
リヒテン「ふふ、人気者も大変ですね。」
貴方「2人とも、そこまで言うならついてきてよ…。」
セーシェル「ねぇ、あのエミールくんの隣の彼って王くんじゃない？」
貴方「王くん？」
セーシェル「って、そんなの後々！早くエミールくんのところに行こう。」
貴方「あ、うん…？」
セーちゃんに急かされて、私は漸く歩き始めた。
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作者名：暁兔 | 作者ホームページ：
作成日時：2023年5月13日 22時
