第70話：記憶 ページ25
イース「さっきの質問だけど…。」
静まった部屋で、不意に口を開いたのはイースさんだった。さっきの質問…恐らく恋人の事だろう。彼は少し口篭ると、深呼吸をして私の目を見つめた。
イース「今は…事情があって、そういう関係じゃなくなってる。これで満足？」
貴方「えっと…。」
これ以上は何も聞くなと言うような視線の強さだ。
イースさんはコーヒーを飲むと、そのまま話し始めた。
イース「ねぇ、単刀直入に聞くけどさ。自分の記憶がおかしいと思ったことはある？」
貴方「あ……。」
記憶がおかしい…。そう、何度も感じてきた。この学園に入る前の事を、あまり覚えていないこと。国の代わりになったこと、本田先輩にお世話になったこと、私が随分昔に生まれた人間であること。それ以外は何も分からない。
貴方「あります…。自分でも数百年の記憶が思い出せなくて…。でも、どうしてイースさんがその事を…？」
イース「僕…というより、僕達国の化身の大体は知っている。恐らく、お前の友人もね。」
貴方「え…？セーちゃんとリヒテンちゃんも…？」
イース「僕達北欧が問題を解決できれば良かったんだ…。でも、そういう訳にはいかなかった。長きに渡る戦いで疲弊していたし、国の立て直しに莫大な時間も労力もお金もかかっていた。お前の借主…グリーンランドをどうにかするなんて、とてもじゃないけど手が回らなかった。」
貴方「グリーンランド……。」
ストン…と自分足りない記憶を補うように嵌ったその言葉。グリーンランド、そうだ…確か私の仮の国はそんな名前だった。
イース「結局グリーンランド自体は、ダン…デンマークの管理下に置かれた。今だってその状況は変わっていない。どうしてお前が代理になったのか、どうして代理が必要だったのかは…申し訳ないけど僕にも分からない。」
貴方「…そう……ですか。」
でも1つ疑問が残る。国を仮に継承するとしても、記憶がなくなっているというのは不思議なことだ。
貴方「あの…。国を継承することと、私の記憶に何か関係はあるんですか…？」
イース「ああ……。本当に僕はあまりにも知らなすぎた。気付いたらお前は、僕ことを忘れていたから。お前の記憶が消された訳を知っているのは、恐らく本田菊ってヒト。僕から言えるのはそれだけだ。」
貴方「本田先輩が…？」
今までずっと傍に居たのに、どうして……？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 96人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：暁兔 | 作者ホームページ：
作成日時：2023年5月13日 22時
