第48話：紫眼 ページ3
倒れ込んだ私を放置して、ブロンド髪の女性は歩いていってしまった。その音を聞き付けたのか、教室からは慌てた様子でフェリシアーノ先輩が出てきた。
フェリシアーノ「ヴェ！？A、こんな所でどうしたの！？」
貴方「すみません、通り掛かっただけです…。」
フェリシアーノ先輩に腕を引かれて立ち上がる。
右足にビリッと痛みを伴ったが、心配をかけたくないから必死で平生を装った。
貴方「ありがとうございます。私はこれで失礼しますね。」
フェリシアーノ「待って！」
貴方「ごめんなさい…！！」
痛む足に鞭を打って、フェリシアーノ先輩から逃れる様に走った。暗い廊下をひたすら駆け抜ける。今彼に会うと、ロヴィーノ先輩を思い出してしまう。
頬が火照って、私絶対に変な顔してる…！
そうしていると、一際足首に酷い刺激を感じた。
痛すぎて、足の力が抜けて立っていられなくなる。
前のめりに倒れかけたその時だった。
グンッと腰を引かれる感覚がした。誰かの腕が、私のお腹に回っている。引き寄せられて、その人に身体を預ける体勢にさせられた時、漸く助けてもらったのだと思えた。
貴方「あ……。」
？「大事無いけ。」
貴方「は、はい…。」
薄い金髪に、紫色の瞳。スレンダーなのに、思ったより身長が高い……。あれ、どこかでこの顔付きの人と会ったような…。
貴方「あの、どこかでお会いしましたか…？」
不思議とそう問うてしまった。ハッとした時には、お相手は何だか考え込んでいる様子だった。
貴方「あ、あの。助けて頂いてありがとうございました。私は五十嵐Aと言います。さっきのはあの…お気になさらず………。」
？「いんや…。」
私をじっと見たまま、あまりにも何も話さない彼に戸惑っていると、ようやく彼がゆっくりと口を開いた。
？「多分、おめが会ったのは俺のおんず。」
貴方「お、おんず……？」
？「あー……、弟。」
貴方「弟さん…ですか。」
独特の言葉を話す彼は、とにかくマイペースそうだ。
生徒会室で出会ったあの男の子を思い出す。
紫眼や、髪もそっくりだ。
貴方「アナタは一体……。」
？「俺はルーカス・ボンネウィーク。ん……まぁ、ノーレとでも呼べ。」
貴方「の、ノーレさん……？」
ノーレ「ノーレ。」
貴方「ノーレ………。」
多分彼の方が上級生なのに、呼び捨てなんて良いのかな。
というか、彼の名前とノーレの関係性がよく分からない…。
本当に不思議なヒトだ。
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作者名：暁兔 | 作者ホームページ：
作成日時：2023年5月13日 22時
