【学園ヘタリア】Hetalia's Conflict Ⅱ 【リメイク版】 (ページ16)

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第61話：楓ページ16

イース「用もないのに話しかけるなんて…変なヤツ。」

貴方「す、すみません。なんだか、イースさんのお顔を見ると安心してしまって…。お邪魔でしたら、すぐに帰ります。」

一歩後退ると、イースは「別に帰らなくていいよ。」とぶっきらぼうに応えた。そうして彼はまた視線を大樹へと移す。

この木は、W学園の学園長であるRoma Empire(ローマ帝国)、通称ローマ校長によって創造されたものだそうだ。何百年もの歴史を刻むこの学校で、その校長の姿は見られない。

幻の存在であるローマ校長は、生徒達から信仰上の人物だと言われている。事実私も会ったことはない。ただ、学園の校門を通ってすぐにある彼を模した偶像のみが、その存在を証明しているのだ。

貴方「この木…。」

イース「楓の木だよ。今はその辺の木と何ら変わらないけど、秋になれば真っ赤に染まって……。」

イースの声は、風の音に掻き消されるほど小さくなった。前に、私にまだ言えない話があると告げた時と同じ表情をしている。

貴方「この木が赤く染まる頃には、アナタのお話を聞くことはできるでしょうか…。」

イース「え？」

貴方「あの日から、そればかりが気掛かりで…。今の私では、アナタの話を聞くに値しないのだろうと…。」

イース「ち、違う。そうじゃなくて…！僕の気持ちの問題だから。前にも言ったでしょ…。僕の気持ちが整理できたら、必ず話すから。」

貴方「…はい。」

2人でもう一度、楓の木を見かけた時だった。
鞄の中から、スマホの着信音が響いてきた。

イース「出ていいよ。」

貴方「は、はい…。もしもし？」

画面には「本田菊」の表記があったが、聞こえてきた声は本田先輩のものでは無かった。

？『ヴェ！！A！？これ、Aの電話で合っているでありますか！？』

貴方「はい、五十嵐です…。その声は、フェリシアーノ先輩ですか？」

フェリシアーノ『正解だよ！って、今は悠長にしてる場合じゃないんだった！助けてA！菊がね、倒れちゃったんだよ！！』

貴方「え！？本田先輩が倒れた！？」

イース「え…？」

隣に居たイースも怪訝そうな顔をする。詳細を聞くと、本田先輩のお宅でお茶をしている最中、フラついてそのまま倒れたそうだ。

貴方「えっと風邪でしょうか？熱はありますか？」

フェリシアーノ『ヴェ…あるよ。凄く苦しそう。』

貴方「分かりました。すぐにそちらへ向かいますね。」

そう言って電話を切った私に、イースが声をかけた。