954話:核 ページ40
貴方「……死にたいよ。今も昔も…ずっと死にたいと思ってる。みんなには言えないけれど、私はこの戦いが終われば、潔く死ぬつもり。」
春火「死ぬつもり?ならば、今でも後でも構わんのだろう。我に全てを委ねれば良い。」
そう、本当に死にたい。私の罪は、みんなを鬼にしたこと。みんなの人生を奪ったこと。私が生まれたこと。妖怪が見えてしまったこと。ああ、数え切れないくらいある。
心の奥底では、常に死というものが存在している。
過去へ飛び、色んな妖怪や鬼と出会い
歴史を見て、私は翻弄された。
自分が人間だった時のことを、思い出す暇もないくらい大変だった。ううん、思い出したくなかったから、考えないようにしていた。
春火にもきっと、そういう過去がある。夢で時々、春火の時代の記憶の片鱗を見る。鬼と、血と、罪の夢だ。
貴方「……アナタは私と同じ。私の中にアナタが入ってしまったのは、きっと私達が似たもの同士だからかな。大切なものを守れなかった私達は、どうやって死ぬのかな…。ねぇ、春火。」
春火「……。」
貴方「私はこのまま、アナタと入れ替わってもいい。アナタの好きにしていい。私の仲間はきっと救われないけれど、それでアナタの守りたいものが救われるなら…構わない。」
春火「小娘……何が言いたい。」
貴方「私はすぐに弱音を吐いてしまうの。でも、土蜘蛛達は違うわ。……きっと、どうにかして結界から出て、アナタを追い掛けて捕まえる。彼等はしぶといの。私を守るためなら何だってしてしまう。ねぇ、どうする?捕まれば、朱夏とも会えなくなるわよ。」
春火「!……朱夏様に…。」
貴方「アナタの目的は酒呑童子に与することではないはずでしょう。」
春火「……お前の言う通りだ。今回だけは力を貸す。次はない。朱夏様と会えなくなるなど、我がこの身体に居続ける意味が無いのと同義。その様な無益な時間を過ごすわけにはいかん。今日のところは勘弁してやろう。」
貴方「うん……。」
春火「それと小娘。お前は先程死にたいと言ったな。悔いているのだろう、自分自身の歩んできた道を。……我も悔いている。この後悔がなくなることはないだろう。無様に後悔しろ。そして自身の過去から逃げるな。思い出せ、人間だったあの時を。」
貴方「…………」
その言葉を聞いて、目の前が真っ白になった。
遠くで、必死に私を呼ぶ声が聞こえる。
大ガマや女郎蜘蛛の声だ。結界の気配も消えている。
春火、核を破壊してくれたんだ。
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ぐりーん(プロフ) - 各々の覚悟が見て取れて感情移入せずにはいられないです...🥲続編ありがとうございます🙇🏻♀️ (2023年2月4日 17時) (レス) @page26 id: ebeccca8db (このIDを非表示/違反報告)
ももこ(プロフ) - 続きが、出てくれて嬉しいです! (2022年12月22日 8時) (レス) @page18 id: 4b14f6b623 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:暁兔 | 作者ホームページ:
作成日時:2022年12月19日 14時