945話:誘惑 ページ31
ーカルラ sideー
烏天狗は、僕とキュウビに結界を熱するように指示した。その後で、大ガマの妖術で急速に冷やし、土蜘蛛とかまいたち、烏天狗で一点に集中攻撃して結界を割るという。
烏天狗が強行手段に出るのは珍しい。切羽詰まっているということだろう。僕達もその案に異論はなかった。
カルラ「…今日も髪結んでないんだな。」
烏天狗「……今そんな話、どうでもいいでしょ。」
カルラ「気になるんだよ。烏天狗が、あれだけは何十年って大事にしていた結紐だったから。」
烏天狗「…そう、だね……。ナツのくれたものだったし…。でももう、切れてしまったよ。」
カルラ「……そっか。」
烏天狗「カルラ、持ち場について。」
カルラ「ああ。」
ナツ…。Aの子孫だ。ナツはどの子孫よりも、特にAに似ていたっけ。フミを思い出すくらい、顔も性格も…声も。
烏天狗が最初動揺していたのも知っていた。アイツは、Aが居なくなってから、子孫に近付こうとはしなかったし、おおもり山の守護をしたいと言ってきたのもその時期だった。
人間には近付かない。Aが居なくなったあとの烏天狗は、昔の僕みたいだった。
春になりかけの、少し風のある日だったかな。
ナツが烏天狗と出会ったのは。
カルラ「……ホント、馬鹿だよね。僕も、お前も。」
烏天狗に聞こえないようにそう言い放った。
哀れだよ。何百年待ったって、彼女は僕達に見向きもしてくれないのに。健気な番犬みたいに…いや、もはや金魚のフンみたいにくっついてさ。
バリンと、結界が割れる音がする。
成功したと思う暇もなく、Aの元へ急ごうと、皆が走り出す。
烏天狗「……血の、においがする…。」
カルラ「ああ…。ダメだ、頭がクラクラする…。」
恐らく、ここにいるカルマ以外の全員が、この血の匂いに酔っているだろう。どうなっているんだ。
今まで、血の匂いで吸血したくなることはあっても、こんなに理性が飛びそうになることなんて無かったのに。
カルマ「ど、どうしたのみんな…!」
大ガマ「……この感じ…。A……か。」
土蜘蛛「早く行くぞ…。捜し出すのが早いか、吾輩達が狂うのが先か……。」
キュウビ「ホント……あの子には毎度驚かされるねぇ…。」
ああ……甘くて、今すぐにでも飲みたくなるような…。
それほど彼女の血は特殊なんだろう。
105人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぐりーん(プロフ) - 各々の覚悟が見て取れて感情移入せずにはいられないです...🥲続編ありがとうございます🙇🏻♀️ (2023年2月4日 17時) (レス) @page26 id: ebeccca8db (このIDを非表示/違反報告)
ももこ(プロフ) - 続きが、出てくれて嬉しいです! (2022年12月22日 8時) (レス) @page18 id: 4b14f6b623 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:暁兔 | 作者ホームページ:
作成日時:2022年12月19日 14時