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944話:ありがとう ページ30

深い深い、毒草の沼。女郎蜘蛛はきっと、毒草でも研究対象として見ているから、こういう空間は好きなんだろう。

わざわざ私達をここへ誘っている。自身の安心する場所。酒呑童子の力が及ばない場所だ。初めから、女郎蜘蛛に戦闘の意思はないことはわかっていた。

彼も疲弊しているはずだ。酒呑童子から逃れるために、少なくとも気を回していただろう。怪我もしている中で、仮に私達と闘っても無益だと理解しているだろう。そのくらい賢い妖怪だ。


貴方「……女郎蜘蛛。」

女郎蜘蛛「……A、会いたかった。」

貴方「うん、私も。……すごく心配した。」


女郎蜘蛛が微かに笑っている。その顔はやはりあの時のガーゼが貼られた状態のままだ。頭の包帯も、血が少し滲んでいる。着物を着ていて分からないけれど、きっとその服の下も傷だらけだろう。


女郎蜘蛛「危ないかもしれないのに、来てくれたのね…。」

貴方「当たり前でしょう…?女郎蜘蛛を連れて帰りたいんだもの。」

女郎蜘蛛「知ってるでしょう…。アタシは、酒呑童子に加担したのよ。…アンタの敵なんだから。」

貴方「…うん。わかってる。」

女郎蜘蛛「結界の外に土蜘蛛ちゃん達を置いてきたりして…。アタシがアンタを攫っても、助けて貰えないわよ。」

貴方「そうだね…。酒呑童子が、私を連れてこい…なんて命令しているなら、私は女郎蜘蛛についていくよ。…それでアナタを守れるなら。」

女郎蜘蛛「A……。」

貴方「あの時、洞窟で私を守ってくれてありがとう…。」

女郎蜘蛛「やめて…。アタシはアンタに感謝されるようなことは何もしてない…。」

貴方「ううん。……酒呑童子が私を付け狙っていることも全部知っていた上で、女郎蜘蛛は私を逃がしてくれた。こんな傷まで作って…。」


女郎蜘蛛の傷だらけの頬と手に触れる。少し戸惑う女郎蜘蛛は、目に涙を溜めていた。


貴方「この手に握っているのは、酒呑童子の血…?……私に飲ませろって言われたの…?」

女郎蜘蛛「……」


女郎蜘蛛は黙り込んでしまったけれど、無言の肯定ということだろう。これを飲めば、きっと私は酒呑童子のいい駒になるし、女郎蜘蛛も酒呑童子から解放されない。


キュウビは、私の血は酒呑童子より強いと言っていた。アレが正しいなら、女郎蜘蛛を救う方法はある。彼を、私の支配下に置けばいい。


貴方「女郎蜘蛛、一度しか言わないからよく聞いて。」

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ぐりーん(プロフ) - 各々の覚悟が見て取れて感情移入せずにはいられないです...🥲続編ありがとうございます🙇🏻‍♀️ (2023年2月4日 17時) (レス) @page26 id: ebeccca8db (このIDを非表示/違反報告)
ももこ(プロフ) - 続きが、出てくれて嬉しいです! (2022年12月22日 8時) (レス) @page18 id: 4b14f6b623 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:暁兔 | 作者ホームページ:   
作成日時:2022年12月19日 14時

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