940話:残酷 ページ26
ーキュウビ sideー
世界はあまりにも残酷だ。
それ故に喜びや楽しみがあって、美しい。
人間界の稲荷神社に住み着いて、色々な人の願いを聞いた。私欲にまみれた願い、誰かのための願い。
それを叶えるために、僕はなんでもした。
いつしか、願いを叶えてくれる稲荷様として祀り上げられ、僕はそれが快感になった。
なんでも叶えた。そう、なんでも。
誰かを、殺めたいという願いも。
何人?いいや、もう数え切れない。
僕の手は気付けば真っ赤になっていた。
正義を気取った気でいたのだ。
誰かの願いを叶えることは、正しいことで
僕を崇拝することは善なのだと。
善悪の区別もつかなくなった
どうしようもない悪妖が出会ったのが大ガマだった。
大ガマ『なんだよ、小汚い狐だな。お前それでいいのか?』
キュウビ『……』
大ガマ『面白いもの、見てみたくないか。お前は人間の欲ってのをよく目にして、そんなになっちまったんだろうけどよ。人間でも、めちゃくちゃ面白い奴も居るんだぜ。』
キュウビ『面白い奴…?』
大ガマ『そーそー。悪なんて何も知らねーって感じで、他人のことばっかり心配する奴。お人好しで、お節介。お前が知らない世界を沢山知ってる。ついてこい、オレに!ついでに、下僕にでもなれ。』
キュウビ『それは御免だ。君の一番の部下にならなってもいいけど。』
最初は興味本位だった。神社にいるだけじゃ退屈だし、少し付き合ってみてもいいかなってくらいの勢いで。
そうして会ったのがAだった。
彼女は僕と初めてあったはずなのに、目を見開いて驚いていた。キュウビが怖いとか?狐の妖怪は初見だったかと考えていたら、彼女は僕を知っていると言った。
そうして、未来では僕達は友達なんだと告げる。
馬鹿みたい。そんなことありえないのに。
未来なんて、知る方法はないのに。
おかしな奴だと思った。
彼女の底なしの明るさや、弱くて力もなくて、震えているのに逃げない姿勢に惹かれた。もっと見ていたくなる。
それは、観察対象としての感情だと思っていたのに…。
彼女が傷付く度、胸の内を巡る苛立ちや怒りが
僕の気持ちをハッキリとさせていく。
面白い、興味がある、そんな言葉では
到底表現しきれないほどだ。
今になって、彼女が過去へ行っていた事実を知って思う。
あの唐突な友達発言は真実だったと。
そしてこの気持ちも、紛れもない恋なんだと。
でもその恋は、きっと叶わないことも分かっている。
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ぐりーん(プロフ) - 各々の覚悟が見て取れて感情移入せずにはいられないです...🥲続編ありがとうございます🙇🏻♀️ (2023年2月4日 17時) (レス) @page26 id: ebeccca8db (このIDを非表示/違反報告)
ももこ(プロフ) - 続きが、出てくれて嬉しいです! (2022年12月22日 8時) (レス) @page18 id: 4b14f6b623 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:暁兔 | 作者ホームページ:
作成日時:2022年12月19日 14時