検索窓
今日:2 hit、昨日:13 hit、合計:6,929 hit

940話:残酷 ページ26

ーキュウビ sideー


世界はあまりにも残酷だ。
それ故に喜びや楽しみがあって、美しい。

人間界の稲荷神社に住み着いて、色々な人の願いを聞いた。私欲にまみれた願い、誰かのための願い。
それを叶えるために、僕はなんでもした。

いつしか、願いを叶えてくれる稲荷様として祀り上げられ、僕はそれが快感になった。

なんでも叶えた。そう、なんでも。
誰かを、殺めたいという願いも。

何人?いいや、もう数え切れない。
僕の手は気付けば真っ赤になっていた。

正義を気取った気でいたのだ。
誰かの願いを叶えることは、正しいことで
僕を崇拝することは善なのだと。

善悪の区別もつかなくなった
どうしようもない悪妖が出会ったのが大ガマだった。


大ガマ『なんだよ、小汚い狐だな。お前それでいいのか?』

キュウビ『……』

大ガマ『面白いもの、見てみたくないか。お前は人間の欲ってのをよく目にして、そんなになっちまったんだろうけどよ。人間でも、めちゃくちゃ面白い奴も居るんだぜ。』

キュウビ『面白い奴…?』

大ガマ『そーそー。悪なんて何も知らねーって感じで、他人のことばっかり心配する奴。お人好しで、お節介。お前が知らない世界を沢山知ってる。ついてこい、オレに!ついでに、下僕にでもなれ。』

キュウビ『それは御免だ。君の一番の部下にならなってもいいけど。』


最初は興味本位だった。神社にいるだけじゃ退屈だし、少し付き合ってみてもいいかなってくらいの勢いで。

そうして会ったのがAだった。

彼女は僕と初めてあったはずなのに、目を見開いて驚いていた。キュウビが怖いとか?狐の妖怪は初見だったかと考えていたら、彼女は僕を知っていると言った。

そうして、未来では僕達は友達なんだと告げる。
馬鹿みたい。そんなことありえないのに。
未来なんて、知る方法はないのに。

おかしな奴だと思った。
彼女の底なしの明るさや、弱くて力もなくて、震えているのに逃げない姿勢に惹かれた。もっと見ていたくなる。

それは、観察対象としての感情だと思っていたのに…。

彼女が傷付く度、胸の内を巡る苛立ちや怒りが
僕の気持ちをハッキリとさせていく。
面白い、興味がある、そんな言葉では
到底表現しきれないほどだ。

今になって、彼女が過去へ行っていた事実を知って思う。
あの唐突な友達発言は真実だったと。

そしてこの気持ちも、紛れもない恋なんだと。
でもその恋は、きっと叶わないことも分かっている。

941話:気配→←939話:躊躇い



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (12 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
105人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ぐりーん(プロフ) - 各々の覚悟が見て取れて感情移入せずにはいられないです...🥲続編ありがとうございます🙇🏻‍♀️ (2023年2月4日 17時) (レス) @page26 id: ebeccca8db (このIDを非表示/違反報告)
ももこ(プロフ) - 続きが、出てくれて嬉しいです! (2022年12月22日 8時) (レス) @page18 id: 4b14f6b623 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:暁兔 | 作者ホームページ:   
作成日時:2022年12月19日 14時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。