70話：思惑マジック！ ページ26
アシェル「そ・れ・で・は〜！説明するね。」
貴方「あの、あまり大声出さない方が…。」
アシェルを大広間へ連れてきて、間髪入れずに大声で説明を始めようとするこの生物を止める。
アシェル「大丈夫。こういうのは大抵、僕の姿は君以外には見えない…とかそういうやつだから。」
貴方「雑…。」
アシェル「藤咲Aちゃん！君がどうしてここに居るのか、説明するには長くなる。簡単に言うと、君はとても疲弊していて、そして僕に救いを求め、僕がそれを受け入れたからココにいるんだ。」
貴方「…は、はあ…？」
アシェル「この世界はね、キミを幸せに導くための舞台なんだ！ここへ来て、楽しく過ごせているでしょう？」
貴方「まあ…。大変なこともあるけど、みんな良い人だし。」
説明がざっくり過ぎてイマイチ分からないけど、私が望んでこの世界へ来たということなんだろう。
アシェル「ただね。この世界へ来る時の代償に、君の前の世界の記憶を消しちゃったんだ。でも記憶が戻らないわけじゃない。何かのターニングポイントに差し掛かった時、君は偶発的にそれらを思い起こす。」
貴方「ターニングポイント…。」
アシェル「その時が差し迫っても、その記憶に潰されないで。きっと、悲しい思いをするとは思うけれど…。」
貴方「……」
なんだろう。思い出せはしないけれど、少し胸が痛むような感覚には何度か陥っている。何かあったのだろうとは薄々勘づいていたけれど。
貴方「…うん。なんとか頑張ってみるよ。それでアシェル…は、どうして今頃になって出てきたの…？」
アシェル「この世界へ来た時から、僕は君の隣にずっといたよ。魔法をかけて、君と関わる人間の縁を繋いでいた。初めて雷門中で目を覚ました時も、あの人たちと関われば君にいい影響があると思って、出会いをショートカットしたんだ！」
貴方「頭にボールをぶつけられる痛い出会いね…。」
アシェル「うっ…ごめん…。この合宿も、君が心を開ける人を見つけるために…僕が魔法でしかけたんだ。」
貴方「心を開ける人…？」
アシェル「うん。…前の世界で君は、心を閉ざしてしまったから。この世界では信頼できる人をたくさん獲得して欲しいと思って。それにね…。」
アシェルが私の頭に飛び乗って、窓からグラウンドを見渡した。
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作者名：暁兔 | 作者ホームページ：
作成日時：2022年2月25日 13時
