67話：想起ノスタルジア！ ページ23
ドカッと言う音がして、ドアの奥から
「いてぇ……！」という呻き声が聞こえた。
驚いて放心している私を横目に、
喜多くんがゆっくりドアを開けると
そこには雪村くんが、額を押さえながら座り込んでいた。
喜多「おや……。これはこれは、白恋のエースストライカーくんじゃないか。」
雪村「っアンタら…！気を付けろよ！」
貴方「ご、ごめんなさい！すぐ冷やすもの用意します…！」
喜多「じゃあ申し訳ないけれど、オレはこのまま失礼するよ。またね。」
貴方「うん！ありがとう喜多くん！……ほら、雪村くん。そんな所に座ってないで、入って！」
雪村「……。」
玄関で立ちっぱなしの雪村くんを
さっきまで喜多くんが座っていた場所まで誘導する。
貴方「見せて。……ああ、これなら冷やせばすぐに治まりそう。でも雪村くん、肌が白いから目立つなぁ…。」
雪村「冷てぇ…。」
貴方「本当にごめんね、気が付かなくて…。」
雪村「別にいい…。」
ぶっきらぼうだし、顔は伏せてしまったから
表情が伺えない。困ったことに、話すネタもない……。
貴方「あれ…、雪村くん。そう言えば、どうして私の部屋の前に？」
雪村「……アンタの様子見に来ただけだ。怪我してるくせに、強がって何も言わなかっただろ。」
貴方「え…？」
雪村「だから…！階段から落ちた時、足怪我しただろって！」
貴方「あ……！ええ！？雪村くん、気が付いていたの！？」
雪村「当たり前だろ…。救護室には行ったのか。」
貴方「行ってないよ。雛乃さんが手当してくれたから。」
雪村「……それで、その後は？」
貴方「後？」
雪村「まさか、放置してるつもりか？見せろ。」
貴方「うわ！ちょっと…！大丈夫だよ、大した怪我でもないし……。」
雪村「この腫れ上がった状態が、軽傷なわけないだろ。」
貴方「す、すみません……。」
雪村くんの手、保冷剤を持って額を冷やしていたからか、とても冷たくなっている。傷口に触れる手が気持ちいいけど、恥ずかしい。
雪村「あのさ…。」
貴方「う、うん？」
雪村「喜多と、何話してたわけ。」
貴方「えっと、サッカーの話と…後は、私の落し物届けてくれただけだよ。」
雪村「落し物……？」
貴方「うん。雪村くんが探しに来てくれた、雨の日の夜に探してた物……。天馬くんに貰ったものなんだ。この世界で、初めて誰かに貰ったもの。」
ゴムをギュッと握りしめると
あの日の天馬くんの顔が脳裏に浮かんだ。
68話：驚愕ミスアンダースタンディング！→←66話：深淵トーキング！
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 25人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：暁兔 | 作者ホームページ：
作成日時：2022年2月25日 13時
