65話：来訪イブニング！ ページ21
全員が夕食を食べ終わった。
時刻は19時過ぎ。
そろそろ、喜多くんが部屋に来る。
貴方「今のうちに、今日あったことまとめておこうかな。」
ベッドに添え付けられた机に向かい、ノートを広げる。
戦術やサッカーの基礎が書かれている。
そろそろ新しいものを買い足さないと…。
貴方「この世界に来て、戸惑ってばかりだけど…。帰るまでの間だし、こうしてサッカーの事をたくさん知ることが出来て良かったなぁ。」
早く元の世界に戻りたいけれど、
思い出せない以上、この世界が今は心地良い。
雷門のみんなや、サッカーを通じて知り合った選手たちに感謝しなきゃ。
貴方「明日は白恋が外か…。みんな合宿終わったらすごく日焼けしてそう。」
元の世界と、大枠の概念が同じなのだろうか。
初めて見るものはあるけれど、驚いたりはしない。
元の世界のことなんて、どう思い出せばいいのか
今の自分にはさっぱり分からない。
ただ、感情的に懐かしいとか
ふとそう思う時があるのは、
元の世界の記憶が蘇ってきているからなのかも。
貴方「まぁ、ゆっくりでいいよね。」
この世界でも充実しているし、寂しいと考える時間はなかった。割となんでも順応できるタイプだったのかもしれない。
サッカー研究ノートを見つめていると、コンコンとドアが叩かれる音がした。もう8時になったのかと、時計を確認する。考え事をしていると、すぐに時間が過ぎるなぁ。
貴方「はい！今開けます。」
喜多「こんな時間に都合つけてもらってすまない。」
貴方「ううん！せっかくだし、お茶でも飲んでいく？」
喜多「そうだね。じゃあお言葉に甘えて。」
貴方「どうぞ。」
喜多くんを部屋に通す。大部屋だろうから、きっと個室は物珍しいんだろう。キョロキョロ辺りを見渡していた。
貴方「そういえば、落し物って…。」
喜多「ああ、これだよ。」
貴方「あ！そのゴム…！」
喜多「キミの物じゃないかと思ってね。」
貴方「ありがとう…。ずっと探してたの。コレ、初めて貰ったものだから…。」
喜多「初めて？」
貴方「あっ、ううん…何でもない！玄米茶だけど、大丈夫？」
喜多「もちろん。」
喜多くんと小さな机を挟み、向かい側に座る。
確か、天河原中のキャプテンだって言っていたよね。
貴方「まだ合宿始まったばかりだけど、そっちのグループはどう？」
偵察だと思われるかな…と思ったけれど、
喜多くんは笑って返事してくれる。
穏やかで、優しい人だな。
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作者名：暁兔 | 作者ホームページ：
作成日時：2022年2月25日 13時
