55話：辛抱ペイン！ ページ11
貴方「いてて…。」
足を引きずり、漸く5階まで来た。
ジャージが半袖ハーフパンツで、黒いハイソックスを履いているから、傷がどうなっているのか見てはいない。
見てはいないんだけど…。
靴下の上からでも分かるくらい、腫れてる…と思う。
貴方「見たら絶対…ぜーーーったい痛い…！！だから忘れて仕事終えてから見る…！」
馬鹿なことをしているのは分かっている。けれど、初日に怪我のせいで仕事が出来ませんでしたなんて、そんな事言いたくない。それでなくとも役立たずなのに、更に迷惑かけてしまう。
貴方「また役立たずって思われたかな…。怪我が無かったから良かったものの、サッカーできなくなるような事があれば、雪村くんになんて言われるか…。」
さっきの彼の鋭い視線で、未だに背筋が凍りそう。
急ぎ足で白恋の大部屋に行く。木戸川清修の様な綺麗さは無いものの、それなりに整頓されていた。
ある一角がとても綺麗に整っているのが気になり、布団に近付いてみると、そこにはパンと折りたたまれた紙があった。つい気になり、中を覗いてしまう。
『アンタ、夕食も居なかったくせに、朝食も居ないとかどういう神経してんだよ。さっさとコレ食べて、仕事しろ。マネージャーが倒れたら誰が代わりになるんだよ。雪村』
貴方「ゆ…雪村くん…！？何これ…マネージャーって私にだよね…？ええ、まさか……。」
まさかさっき階段を上って来たのも、
私のことを気にして？いや、それは無いか。
貴方「ちゃんと見てるんだなぁ…。」
近くにあった紙とペンを借りて、お礼を書き
雪村くんの布団の上に置いた。
厳しいけど、優しい人なのかもしれない。
温かい気持ちになりながら、白恋の大部屋をサッと掃除して、洗濯物を回収後に、ランドリールームへ移動した。
各自洗濯を終えてから、
木戸川清修の分は、時間があるので先に干しに行く。
貴方「鬼門は新雲か……。朝起こすのは白恋から。掃除は新雲から…。あ、フリータイムに、木戸川のみんなと、雪村くんにお礼のお菓子でも見に行かなきゃ。」
木戸川の洗濯物を片手に、廊下を歩きながらメモをとる。この時にはもう、足の痛みの事なんてスッカリ忘れてしまっていた。
屋上で洗濯物を干していると、一際大きくて長い笛の音がする。腕時計を確認すると12時だった。昼ご飯で、みんなが一度2階の宴会場へ集まる時間。
貴方「私もお昼食べよう。」
屋上でさっき頂いたパンとお菓子を食べて、また仕事の続きだ。
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作者名：暁兔 | 作者ホームページ：
作成日時：2022年2月25日 13時
