紙と指輪と ページ35
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気持ちのいい日曜の朝。
軽くなった腕に目を覚ませば、そこに寝ているはずの彼女の姿がなかった。
仕事休みだろうし朝飯くらいどっかで買ってくのに。
まだ眠たい体を起こして、キッチンにいるであろう彼女の元へと足を進める。
途中どこからか猫の鳴き声が聞こえてくる。
それに今日はやけに暖かく、心地のいい天気だ。
玲於「おはよー…」
あれ…
リビングを探してもいないし、キッチンからも返事はない。
玲於「A?」
おかしいななんて呑気に思ってると、テーブルに朝飯があって。
小松菜の味噌汁と、だし巻き卵。
冷奴、ご飯に、小さくカットされたブロッコリーが入った温野菜サラダ。
それにはちみつ漬けナッツのバニラヨーグルトまで。
今日もまた美味しそうな朝飯に浮かれる気分とは裏腹に、やっぱり彼女の姿が気に掛かる。
分かった、きっと洗面所だ
くるっと方向転換をしたけど。
…待って。
もう一度テーブルを見返す。
朝飯の先に見えたのは彼女の分朝飯ではなく、一枚の大きな紙と一切れの小さな紙。
そしてリボンが掛かった見覚えのある小さな箱。
何か胸の奥がザワっと動いた気がして、強く目を瞑る。
そしてもう一度ゆっくりと目を開く。
そこには間違いなく離婚届と書かれていて、既に彼女のサインがされている。
いやいやいや
まさかそんな訳…
疑いつつも恐る恐る箱を開けると、俺が彼女にあげたはずの結婚指輪が。
もうここに来て一発逆転なんてありえないけど、最後の希望をかけて小さな紙切れを手に取る。
“ ごめんね。
どうかお元気で。 “
そんな文字たちが寂しそうにぽつんと揺れる。
なんだよ、これ…
意味が分からず頭の中が真っ白になった。
愛想つかされて嫌になったとは到底考えにくいし、浮気で彼女を裏切った覚えも無い。
もしかしてこの前の喧嘩?
いやいやそれは解決したし。
しばらく固まってそこから動けなくて、彼女が置いていったものをただ眺めることしか出来なかった。
それから何分が経っただろう。
飯…
飯食おう。
急に我に返った俺は、それらが示す意味もその役目もたったひとつしかないのに、わざと気付かないふりをした。
そうすれば傷つかなくて済むと思ったから。
今この状況から、逃げられると思ったから。
幸せの絶頂に訪れた絶望。
結婚してから2人で過ごす2度目のクリスマス直前。
理由も分からぬまま彼女は手を離して、俺の目の前からいなくなった。
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you(プロフ) - レイさん» レイさんコメントありがとうございます。十分に作品に浸っていただけたら嬉しいです\(^^)/このあともお楽しみください。 (2019年3月28日 22時) (レス) id: 6afcf836b3 (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - なんとなく先がわかってしまったような気がして…すでに泣けてきます! (2019年3月28日 18時) (レス) id: ead29fc4e8 (このIDを非表示/違反報告)
saeco10(プロフ) - お返事ありがとうございます(^-^)この歌が好きなので、嬉しいです。引き続き楽しみにしております! (2019年2月28日 22時) (レス) id: f42b071ce0 (このIDを非表示/違反報告)
you(プロフ) - saeco10さん» saeco10さん、コメントありがとうございます。その通りです。オリジナルも入っていますが、基本的にYの歌詞に沿って書かせて頂いています。(ネタバレになってしまうかもですが、、笑)この後もぜひ楽しんでいってください! (2019年2月28日 10時) (レス) id: 6afcf836b3 (このIDを非表示/違反報告)
saeco10(プロフ) - Yをモチーフにされてるのかな?素敵(*´∇`*) (2019年2月27日 23時) (レス) id: f42b071ce0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:you | 作成日時:2019年2月24日 12時