写真立て ページ32
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玲於「ただいまー」
俺が玄関のドアを開けてそう言えば必ず
「おかえりなさい」
と出迎え入れてくれる彼女がいる。
そんな毎日は、俺の望んでいた日々そのもの。
「お疲れ様。玲於くんごめんね、今日まだ夜ご飯出来てないんだ」
そりゃあ俺の仕事はその都度帰る時間が違うから、俺の方が早く帰る日もあれば、何日間も家を空ける日もある。
今日はちょっと早く仕事が終わったから、彼女は料理中だったみたいでエプロンを着けてる。
結婚してもう365日以上過ぎたのに、エプロン姿を見るのはその中のたった数える程しかない。
それを思うと申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
玲於「全然いいよ。俺にも何か出来ることある?」
「だめだめ!玲於くんはテレビ見て待ってて」
玲於「ん、分かった」
そう言うと、張り切って
「じゃあ、すぐ作っちゃうね!」
と先にキッチンの方へ戻って行った。
俺は靴を脱ぎながらふと横を見ると
あれ…
何か妙な違和感を感じた。
いつも玄関のところの写真たてに飾ってあった結婚式の写真が見当たらない。
そこには写真立てだけが、ただただ佇んでいる。
玲於「ねー、玄関にあった結婚式の写真はー?」
キッチンにいる彼女に聞いてみる。
「あぁ、それ?私今日仕事なかったから、結構いっぱい掃除したんだけど、その時に新しい写真にしたいなーって思って抜いといた」
彼女はリビングのドアからこっちに顔を出してそう言った。
玲於「そっか。てか、今日仕事じゃなかったんだね」
「うん。有給消化〜」
俺もリビングに行くと、テレビの横の写真も抜かれている。
こっちも取ったんだ。
玲於「ゆっくりできた?」
「できたよ。やりたいことも沢山できて満足な有給でしたっ」
有給のおかげなのか、いつもよりも変にテンションが高い。
ま、それもいいことだ。
玲於「次の写真何にすんの?」
「うーん。それは迷い中」
玲於「決まるまで入れとけばよかったのに」
野菜を切る音と彼女の声が重なる。
「…確かに。それもそうだね(笑)」
玲於「じゃあ今度連休あったら、どっか旅行でも行く?結局新婚旅行、行けてないし」
「その旅行の写真飾るの?」
玲於「そういうこと」
「旅行かぁ…いいね」
この時、写真の入ってない寂しい写真立てに
次に入る写真は何だろうとワクワクしていた自分がたまらなく憎く思える。
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you(プロフ) - レイさん» レイさんコメントありがとうございます。十分に作品に浸っていただけたら嬉しいです\(^^)/このあともお楽しみください。 (2019年3月28日 22時) (レス) id: 6afcf836b3 (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - なんとなく先がわかってしまったような気がして…すでに泣けてきます! (2019年3月28日 18時) (レス) id: ead29fc4e8 (このIDを非表示/違反報告)
saeco10(プロフ) - お返事ありがとうございます(^-^)この歌が好きなので、嬉しいです。引き続き楽しみにしております! (2019年2月28日 22時) (レス) id: f42b071ce0 (このIDを非表示/違反報告)
you(プロフ) - saeco10さん» saeco10さん、コメントありがとうございます。その通りです。オリジナルも入っていますが、基本的にYの歌詞に沿って書かせて頂いています。(ネタバレになってしまうかもですが、、笑)この後もぜひ楽しんでいってください! (2019年2月28日 10時) (レス) id: 6afcf836b3 (このIDを非表示/違反報告)
saeco10(プロフ) - Yをモチーフにされてるのかな?素敵(*´∇`*) (2019年2月27日 23時) (レス) id: f42b071ce0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:you | 作成日時:2019年2月24日 12時