27 生き字引 ページ30
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「モソ」
長次が何か言ってる。囁くような小声、ほんとに全然聞こえないんだなぁ……。聞こえないまま返事をするわけにも行かないので軽く会釈をすると、長次は満足したように机へ視線を落とした。
吉野作造先生から指示されたメモと本棚を交互ににらめっこしていると、雷蔵が声をかけてくれた。
「その棚の……ここからここまで、だね。四年生の授業で使用するため貸出、と。こちらでも記入しておくよ」
「ありがとう！」
雷蔵がいてくれて助かった。
この時代の書物は、くずし字？漢字？ ――教科書や博物館で見たような、うねうねした文字で書かれている。目の前にあるこれらも全部、21世紀だと国宝級の代物になるのかなぁ？ そう考えると、なんだか触れるだけで緊張してしまう。
「文字が、読めるのか」
背後から長次の声が聞こえてきた。私は迷った。
完全に読めないと言えば嘘になるけれど、くずし字のようなものは流石に読めない。しかも時代を考えても、読めると言えばそれなりの教育を受けてきたということになる――自分をリスの生まれ変わり(？)だと言い張っているのに、これじゃあ怪しまれる原因になるんじゃないか……？
私は悩んだ末に、「簡単なものなら」と無難な回答をした。長次もそれ以上聞いてこなかった。
助かった……。
「事務員のAさんですよね」
名前を呼ばれてふと振り返ると、そこには水色の制服が四人いた。
一年い組の四人。わわわ目大きい……!! 可愛い!!!! 天使とはこのことか……!!!!
「先輩方より伺っております。なんでも、リスに変化することができるのだとか、幻術が得意なのだと――」
「伝七！」
ピシャリと制止する一平。
心なしか、みんな顔色が暗いように見える。いや、この目でリアルに見たのは初めてなんだけど。
「僕たちの話を聞いていただけませんか」
左吉の切羽詰まった声と突然の提案に戸惑いつつ、雷蔵のほうを振り返った。
「今日は他に誰も居ないし、特別に――いいですよね、中在家図書委員会委員長」
「……いいだろう」
この本も、明日に行う授業の準備で、夕方の鐘が鳴るまでに教室へ運んでおけばいいのだから――ちょっとだけ、道草してもいいか。
私は四人の方へ向き直して、話を聞きつつ図書室で一休みすることにした。
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よしのや(プロフ) - No.0さん» コメントありがとうございます、頑張ります!!(*´ｪ`*)最近更新頻度が落ちてて申し訳ないです、気長にお待ちいただけると嬉しいです…！m(_ _)m (2019年5月6日 8時) (
レス) id: fe1483e79b (このIDを非表示/違反報告)
No.0 - 始めてのジャンルだ〜！読むのが楽しみです！更新がんばってください！応援してます。 (2019年5月2日 22時) (レス) id: 70509151e8 (このIDを非表示/違反報告)
よしのや(プロフ) - ごままぐろさん» わぁぁありがとうございます、すっごく励みになります!!!!（〃ω〃）ところどころギャグ路線に走ってみましたが、真面目とギャグの温度差が物凄いことになってしまいました……笑 (2019年3月13日 23時) (レス) id: 6e21aa2086 (このIDを非表示/違反報告)
ごままぐろ(プロフ) - 天女ものとは少し違って、面白くて好きです笑 (2019年3月13日 18時) (レス) id: 6c83279883 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしのや | 作成日時：2019年2月23日 17時
