検索窓
今日:8 hit、昨日:83 hit、合計:145,142 hit

参拾伍話 ページ37

一味が招かれたのは男が営む小さな酒場。

内装は全体的にウッド調でまとまっており、古びたバーカウンターには所狭しと空の食器類が積まれている。
客席に逆さに乗せられた椅子や、酒の代わりに埃の積もったグラス、それらが年月の経過を感じさせてどことなく物悲しい。

一味が全員店内に入ったことを確認してから、男は店のシャッターを降ろしランプの仄明るい光で店内を照らした。


「なんのもてなしも出来ねェで悪いな。しかしよくまぁあの嵐を抜けて辿り着いたもんだ…一体何の用だ?」



「その事なんだがよ、おっさんこの島の「取引」についてなんか知らねェか?誰も居ねェし港もそんな雰囲気じゃねェしで困ってんだ」


「お前さんら、何も知らねェで来たってのか…?しかしそれにしちゃ…」


男はどこか意味ありげな態度で腕を組むだけだった。狭い店内で彼が唸る息遣いばかりが響く。
痺れを切らしたサンジが男に詰め寄った。


「如何にも訳アリって感じだな」



「とにかくおれたちには情報が足りてねェんだ、知ってること全部話しちゃくれねェか」





「…そういう事ならちょいと遡って話してやろうか。

今じゃ見る影もないがここは確かに"歓楽の町"に相応しい盛り上がりだった。
客は昼も夜も無く酒を呑み、遊戯に興じる。
この島には小せェが遊園地だって、商業施設だって何だって揃ってたんだ。そんで嫌なことみんな吹き飛ばしちまう気風の良い島だった…
この通りの店も随分繁盛していたもんだ」




昔を懐かしむような、失くした日々を愛おしむような声色で彼は語る。一味は何も言えずにただ耳を傾けていた。





「連中はその金に目を付けた。どこからかやって来た"ポートマフィア"だ。
元は小さな貿易会社だったのが、島の若い連中を取り込んであっという間にこの地に棲みついた。
そして、あろう事か奪ったペルニカ島の利権書を盾に、おれたちに法外な地代を要求してきたんだ。
逆らった人間はみんなアイツらの手で消えちまった…
悪い噂は広まるのが早いもんで観光客の足も途絶え、ご覧の有様って訳だ」

参拾陸話→←参拾肆話 / 歓楽の島



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (149 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
344人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

まどろみマフィア(プロフ) - ぽ、ぽぽぽぽぽポートマフィア?!なんですと?!ギュフフィンフィン(ポトマが出てきて歓喜中の中也推し) (1月25日 0時) (レス) @page37 id: 2cd01fe314 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2022年11月7日 10時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。