参拾伍話 ページ37
一味が招かれたのは男が営む小さな酒場。
内装は全体的にウッド調でまとまっており、古びたバーカウンターには所狭しと空の食器類が積まれている。
客席に逆さに乗せられた椅子や、酒の代わりに埃の積もったグラス、それらが年月の経過を感じさせてどことなく物悲しい。
一味が全員店内に入ったことを確認してから、男は店のシャッターを降ろしランプの仄明るい光で店内を照らした。
「なんのもてなしも出来ねェで悪いな。しかしよくまぁあの嵐を抜けて辿り着いたもんだ…一体何の用だ?」
「その事なんだがよ、おっさんこの島の「取引」についてなんか知らねェか?誰も居ねェし港もそんな雰囲気じゃねェしで困ってんだ」
「お前さんら、何も知らねェで来たってのか…?しかしそれにしちゃ…」
男はどこか意味ありげな態度で腕を組むだけだった。狭い店内で彼が唸る息遣いばかりが響く。
痺れを切らしたサンジが男に詰め寄った。
「如何にも訳アリって感じだな」
「とにかくおれたちには情報が足りてねェんだ、知ってること全部話しちゃくれねェか」
「…そういう事ならちょいと遡って話してやろうか。
今じゃ見る影もないがここは確かに"歓楽の町"に相応しい盛り上がりだった。
客は昼も夜も無く酒を呑み、遊戯に興じる。
この島には小せェが遊園地だって、商業施設だって何だって揃ってたんだ。そんで嫌なことみんな吹き飛ばしちまう気風の良い島だった…
この通りの店も随分繁盛していたもんだ」
昔を懐かしむような、失くした日々を愛おしむような声色で彼は語る。一味は何も言えずにただ耳を傾けていた。
「連中はその金に目を付けた。どこからかやって来た"ポートマフィア"だ。
元は小さな貿易会社だったのが、島の若い連中を取り込んであっという間にこの地に棲みついた。
そして、あろう事か奪ったペルニカ島の利権書を盾に、おれたちに法外な地代を要求してきたんだ。
逆らった人間はみんなアイツらの手で消えちまった…
悪い噂は広まるのが早いもんで観光客の足も途絶え、ご覧の有様って訳だ」
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まどろみマフィア(プロフ) - ぽ、ぽぽぽぽぽポートマフィア?!なんですと?!ギュフフィンフィン(ポトマが出てきて歓喜中の中也推し) (1月25日 0時) (レス) @page37 id: 2cd01fe314 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翠 | 作成日時:2022年11月7日 10時