弐拾玖話 ページ30
『ほら、案外仲間だからこそ言えないことってあると思うのだよ。その点私なら気楽なモノさ、"よく喋る置物"くらいに捉えてくれて構わない』
「置物は…喋らないと思うわ」
『ふふ、違いないね』
気付けば私は彼女に胸の内を洗いざらい吐き出してしまっていた。
今まで多くの組織を渡り歩き、生きるために利用してきたこと、けれどこの「麦わらの一味」だけはいつしか大切な存在になってしまったこと。
彼らと出会ってから毎日が楽しいことばかりで、例え"罪"だとしても生きていたいと願ってしまったこと。
全てを聞き終えたAちゃんは静かにこちらに手を伸ばして、そして。
ペちん。
間抜けな音が額で弾けた。
デコピンされたのだと気づくまでに時間はかからなかった。困惑する私を置いて、彼女は堂々とため息を吐いて私のベットに腰掛け、足を組んだ。
『はァ呆れた!聖人ぶった偽善者の言葉を何時までも気にしていて何になると言うの?』
憤慨、というより呆れ返ったような彼女の姿に困惑が募るばかりだった。
『君を苦しめる「正義」だとかは、私に言わせれば唯のハリボテだ。
彼等は"利権"だとか"机上の空論"なんかを美辞麗句で着飾らせて、それを「正義」と宣う詐欺師と差異ない』
「!…なら、貴女の思う正義って何かしら?」
『…そうだね、例えば今日。君を護る為にそこの麦わらくんは敵いもしない相手に立ち向かった。
その時彼に「ポーネグリフを読める女がいないとおれは海賊王になれな〜い!」なんて邪心があったと思うかい?』
どこまでも真っ直ぐな彼の性格的にそんな下心があったとは思えない。私が首を降ると、Aちゃんは満足気に笑った。
『
此れも理想論だけれどね、と彼女は首を竦めた。
「良いわね。好きよ、貴女の正義。…世界中の人が皆貴女みたいだったらもう少し生きやすかったかもね」
『冗談じゃない。偏屈人間が蔓延る海なんて真っ平御免だよ』
「うふふ、そうかしら」
気付けば空は白み始め、朝刊を届けるニュースクーの鳴き声が微かに聞こえる。
私たちは皆が起きる頃になるまで、ずっと他愛ない話を続けていた。
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まどろみマフィア(プロフ) - ぽ、ぽぽぽぽぽポートマフィア?!なんですと?!ギュフフィンフィン(ポトマが出てきて歓喜中の中也推し) (1月25日 0時) (レス) @page37 id: 2cd01fe314 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翠 | 作成日時:2022年11月7日 10時