六話 さとみくんside ページ8
俺には気になってる奴がいる。
それは同じクラスの清水Aっていうやつ。
昔から女子は全員同じなんだと思ってた。
顔だけのやつとか、外見しか見てなくて
でも彼奴は馬鹿みたいに真っ直ぐで真っ正面からぶつかってくる
クラスからは姉貴なんて呼ばれてて
頼まれごとは断れなくて
面倒見のいい姉御肌で_
正直あんなやつ初めて。
もっと気になるのはあいつが他の女子達みたいに
“おしゃれ”や“メイク”などの興味が全くないってこと。
どこか引っかかるんだよな
女子力がないって考えもあったけどなんか違うんだよな…
なんか…時々苦しそうな、悲しそうな顔をする。
それも決まって女子とファッションやおしゃれの話題を話してるときだけ。
なんかあったのかって思って聞いてみたけど
本人にはぶらかされた。
少しでもあいつが
楽になってほしくて
たよってほしくて
あいつが抱えている“何か”を
取り除いてあげたい。
そんなとき
見てしまった。
あいつが
いつも笑ってて、クラスの中心に居て、明るくて元気なあいつが
誰もいない教室でひとりで泣いているのを_
声を押し殺して、まるで迷子になった小さな子供のように
震えていて、か弱そうに泣いてた。
『…A』
俺が声をかけると肩をビクッと震わせ
恐る恐るこちらをみる。
「も、桃根…なんでっ…」
涙でぐしゃぐしゃになった顔がこちらを見ている。
『お前こそここで何してんだよ』
「ぁ…ごめっ…いま涙とめる…」
本当、こういう時だけか弱いとか反則だと思う。
「あ…れ?…涙がっ…とまらないやっ…なんで…だろ」
あぁ、もうと思いながらAに近づき
そっとその身体をこちらに引き寄せて、腕の中に閉じ込める。
『好きなだけ泣けよ。ここには俺とお前しかいねーからさ』
「…も、桃根っ…」
『泣きやむまで居てやる』
「…ばかぁ」
『へいへい』
Aは俺の腕の中で泣きじゃくった
なにも知らない俺はただひたすらその背中をさすることしか出来なかった。
そのことが悔しくて自分に腹が立つ。
泣き止んだAは
いつもとは違う
か弱くて、儚い笑顔で
「ありがとう」と言った。
その笑顔を見た瞬間おれは
こいつを守らなきゃって思えた。こいつをひとりにしちゃだめだって。
『あのさ…約束するから、絶対俺が守って約束するから』
お前のこともっと知りたい。
そう思っちゃだめですか?
『なにがあったか、俺に話してくんねぇ?』
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作者名:はーちゃん | 作成日時:2021年9月14日 18時