参拾伍 包帯 ページ48
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改めて見ると、雑渡さんは身長が高いなぁ。立っているだけで迫力がある。
「Aちゃんは、また怪我か何かか」
「私だって四六時中怪我をしているわけじゃないですよ!」
「そうか、ごめんごめん」
雑渡さんは私の手元を見て、「包帯巻きの手伝いか」と尋ねた。
「はい、これには色々と訳がありまして――」
「あぁ、合戦場で伊作くんが怪我人の手当をする様子を側で見て、『自分も人助けができるようになりたい!』と思い保健委員の手伝いを始めることにしたんだろう?」
「昨日伊作先輩に言ったばかりですよその話!?」
どこから話が漏れたんだ、とぶつぶつ呟く私の反応に、雑渡さんは「ふふっ」と堪えるように笑った。
「じゃ、私の包帯も取り替えてくれたりするのか」
「あ……私、包帯巻くのあまり得意じゃなくて」
「A先輩、こなもんさんは巻く包帯の量が多いから、いい練習になると思いますよ」
「伏木蔵くん、人を練習台みたいに言わないで……」
「ふふっ、すごいスリル〜」
まぁ実際そうなんだけどね、なんて言いながら、雑渡さんは腕を差し出してきた。
「とりあえず、左腕だけでも」
その姿は、あの夕暮れに差し出された手を思い出させて――拒否する訳には、いかないか。
「あっ、伊作先輩っ、この薬草なくなりそうなんです、薬草園に採りに行きましょう! ふ、二人のほうが早いですから」
「あ、あぁ、わかった。じゃあ僕達は行ってくるよ、何かあったら呼びに来てくれ」
二人は何故か慌てるように医務室から出ていってしまった。
「そんなに気を遣わなくてもいいのに、二人とも……」
「きをつかう……?」
私が首を傾げていると、雑渡さんはまた笑った。
じゃあ替えていきますね、と言って、袖を捲り、他愛ない会話をしながら包帯を替えていく。
「――ねぇ、Aちゃん」
「はい。あ、包帯きつくないですか?」
「あ、うん」
包帯に集中しながらだと、いつも以上に頭が働かなくて返事が曖昧になってしまう。
「伝えたいことがある」
「……はい」
「でも今、君は包帯巻きに熱中している。だから、伝えるのはそれが終わったらにするよ」
どうせ、またしょうもない揶揄いなんだろうな。それでも嬉しくないわけじゃない、けど。
包帯巻き、さっさと終わらせてしまおう。
私は包帯を巻く速度を速めた。それでもしっかり、丁寧に。
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廬。(プロフ) - 最高です……どうか続編頑張ってください……!! (2019年11月1日 13時) (レス) id: af811dac15 (このIDを非表示/違反報告)
鹿子木(プロフ) - ありがとうございます。ご馳走様でした。これからも頑張って下さい。 (2018年10月3日 4時) (レス) id: d5c9836270 (このIDを非表示/違反報告)
よしのや(プロフ) - 妖狐の巴衛さん» そのセリフは雑渡さんの発言になります!! まだまだ小説初心者ゆえ、表現が拙く分かりづらくて申し訳ないですm(_ _)m コメントありがとうございました!! (2018年6月17日 23時) (レス) id: 7e36950532 (このIDを非表示/違反報告)
妖狐の巴衛(プロフ) - 「……尊奈門、忍術学園の忍たまだ」は誰がかけた言葉なんですか? (2018年6月17日 21時) (レス) id: 2ff3e29f1d (このIDを非表示/違反報告)
よしのや(プロフ) - サラさん» ありがとうございます!! そう言っていただけると、すっごく励みになります(=´▽`=) (2018年4月5日 22時) (レス) id: 5bb94c3c23 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:よしのや | 作成日時:2018年3月27日 20時