参拾肆 医務室 ページ47
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包帯巻き機の音が響く医務室の中は、伊作先輩と私の二人が座っている。
別段盛り上がるような会話もなく、静かな放課後だ。
「A、包帯巻き機はもうちょっとゆっくり巻くと綺麗に出来るよ」
「はい! 包帯は、しっかり巻いても……キツ過ぎず……」
私は手を動かす速さを緩めて、包帯を綺麗に整え直した。
「失礼します!」
襖が開いて、三反田数馬くんと浦風藤内くん――三年は組の二人が入ってきた。
「どうしたの、二人とも」
「あぁ、いえ大した用ではないんですが……」
「A先輩が任務に成功したら、『誰かが任務に成功したときお祝いする予習』をする、とお約束していた事を思い出しまして!」
元気よく応える藤内くんと、苦笑いを浮かべる数馬くん。そういえば数馬くんと、そんな約束してたなあ。
二人はその場で丁寧に正座し、「任務、どうでしたか……?」と上目遣いで聞いてきた。
私はちょっと迷ってから、「まぁ、成功といえば成功かな」と答えた。
一応、家族にも会えたし……っていうか、そもそも任務でも何でもないんだけど。
それでも二人はわぁっと笑顔になった。あ、かわいい。
「せーのっ」
「「A先輩、任務成功おめでとうございます!!」」
パチパチパチ、と口で言いながら拍手なんてされちゃって――なんだかすごく照れくさい。
「あっ、でも本当の……ちゃんとした任務に関しては、六年生の先輩方とかくノたまが頑張っていたよ」
「そうなんですね!じゃあ伊作先輩にも……」
「「伊作先輩、任務成功おめでとうございます!!」」
伊作先輩が照れ笑いし、医務室に和やかな空気が流れる。
二人は「他の六年生も祝ってきます!」と言って足早に医務室を出ていった。
入れ違いで、一年生の鶴町伏木蔵くんが入ってくる。
「失礼します、保健委員の当番にきましたぁ」
「早かったね伏木蔵。あ、もしかして……」
その中で、私はしきりに屋根裏の方を気にしていた。
そろそろかな、と包帯巻き機を回す手を止める。
鼓動が高鳴って、なんだかそわそわしてしまう。
ガタン。
天井から物音がして、曲者さんが屋根裏から降りてきた。
「やあ」
私と伏木蔵くんは、図ったように声を揃えた。
「「タコヤキドキ城の、ちょっとこなもんさん!」」
「タソガレドキ城の雑渡昆奈門、だ」
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廬。(プロフ) - 最高です……どうか続編頑張ってください……!! (2019年11月1日 13時) (レス) id: af811dac15 (このIDを非表示/違反報告)
鹿子木(プロフ) - ありがとうございます。ご馳走様でした。これからも頑張って下さい。 (2018年10月3日 4時) (レス) id: d5c9836270 (このIDを非表示/違反報告)
よしのや(プロフ) - 妖狐の巴衛さん» そのセリフは雑渡さんの発言になります!! まだまだ小説初心者ゆえ、表現が拙く分かりづらくて申し訳ないですm(_ _)m コメントありがとうございました!! (2018年6月17日 23時) (レス) id: 7e36950532 (このIDを非表示/違反報告)
妖狐の巴衛(プロフ) - 「……尊奈門、忍術学園の忍たまだ」は誰がかけた言葉なんですか? (2018年6月17日 21時) (レス) id: 2ff3e29f1d (このIDを非表示/違反報告)
よしのや(プロフ) - サラさん» ありがとうございます!! そう言っていただけると、すっごく励みになります(=´▽`=) (2018年4月5日 22時) (レス) id: 5bb94c3c23 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:よしのや | 作成日時:2018年3月27日 20時