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参拾参 口へんに耳三つ ページ43




 私はふと思い出して、ずっと大事に抱えていた荷物から、伊作先輩と立花先輩に頼まれていた煎餅の包みを取り出した。


「半日も経ってないんで、まだ湿気ってはないと思うんですけど……すみません、遅くなっちゃって」


「ああ!! 僕らもすっかり忘れていたよ」

「ありがとう、A。帰ったら皆で食べよう」


 その言葉に、六年生達がわっと盛り上がる。


「よし、じゃあ帰ろう!」

「おー!!」

「いけいけどんどーん!!」



 タソガレドキ忍者ももう帰るのかな、と思って雑渡さんの方を見ると、部下の人が何かを報告しているみたいだった。


 私に手まで差し伸べてくれたこの人は忍者隊の組頭である――という当たり前の事実がくっきりと象られたように、さっきまで近くにいたのに、急に遠くの存在に思えてくるような感覚。

 さっき頭を過ぎったように私があの人に惚れたとしても、きっとこれ以上お近づきになれる存在ではないんだなぁ、と途端に悲しくなってくる。


 部下が報告を終え引き下がると、雑渡さんは少し考え込んだ後に「Aちゃん」と私の名前を呼んだ。

 そして、内緒話をするように声を潜めて、あることを囁いた。





 その気配が近くまで来て、低い声が耳に近づいて、どきどきしているのがバレやしないかと緊張しながら話を聞く。







 話終わると、早々にタソガレドキ忍軍は撤退していった。




「――――じゃ、また」




 それから、忍術学園に帰ってからもずっとその気配が背後に残っているようで、私はその日眠りに落ちるまで、ずっと雑渡さんのことが頭から離れずに居た。









***

『――――も一緒なんだね』

***

『私は――――のこと、』

***

『―――――の為ならなんでもできると思っていたが』

***


 何か大事なこと、忘れてるような。



「おーいA!!」


 友人の声で目を覚まし、大袈裟な仕草で上半身を起こした。



「おはよ」


 んー、と曖昧に返して伸びをする。

 すっかり見慣れた明るい長屋の景色は、私を深く安心させてくれた。



「昨日は大変だったねえ」

「うん……って、えっ、なんで知ってるの!?」

「いやぁほら、くノ一だし? っていうか潮江先輩に伝言預かってもらったじゃない」

「そ、そういえばそうだった」

「ほら授業遅刻するよ、朝ごはん食べに行こ」


 あの人に、何か言われた気がするんだよな。
 今日もまた、私は雑渡さんのことが頭から離れなくなりそうだ。

11. 自覚症状→←参拾弐 夜は忍者の



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廬。(プロフ) - 最高です……どうか続編頑張ってください……!! (2019年11月1日 13時) (レス) id: af811dac15 (このIDを非表示/違反報告)
鹿子木(プロフ) - ありがとうございます。ご馳走様でした。これからも頑張って下さい。 (2018年10月3日 4時) (レス) id: d5c9836270 (このIDを非表示/違反報告)
よしのや(プロフ) - 妖狐の巴衛さん» そのセリフは雑渡さんの発言になります!! まだまだ小説初心者ゆえ、表現が拙く分かりづらくて申し訳ないですm(_ _)m コメントありがとうございました!! (2018年6月17日 23時) (レス) id: 7e36950532 (このIDを非表示/違反報告)
妖狐の巴衛(プロフ) - 「……尊奈門、忍術学園の忍たまだ」は誰がかけた言葉なんですか? (2018年6月17日 21時) (レス) id: 2ff3e29f1d (このIDを非表示/違反報告)
よしのや(プロフ) - サラさん» ありがとうございます!! そう言っていただけると、すっごく励みになります(=´▽`=) (2018年4月5日 22時) (レス) id: 5bb94c3c23 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:よしのや | 作成日時:2018年3月27日 20時

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