伍 喜怒哀楽 ページ5
「それじゃあ、失礼しました」
伊作先輩に書類を手渡し、医務室をあとにする。
障子を閉めながら、今日の昼食について考えていると、不意に水色の制服が視界に入った。
「伏木蔵くん!」
「A先輩、こんにちは〜」
「これから委員会活動?」
「いえ、これを雑渡さんに頼まれて、食堂のおばちゃんから貰ってきたんです」
伏木蔵くんの手には、雑渡さんがいつも持っている竹筒が握られていた。
竹筒に入れる水なら食堂まで行かなくても手に入るのに、何故わざわざ伏木蔵くんを食堂まで貰いに行かせたのだろう……?
「失礼しま〜……」
「Aちゃんっ、この書類なんだけど!」
伏木蔵くんが開けようと手をかけた障子が不意に開き、伊作先輩が飛び出てきた。
「うわああっ」
「わわっ」
伏木蔵くんが、驚いて尻もちをつく。
「ふ、伏木蔵!! すまないっ、怪我はないか!?」
「はい……あっ」
雑渡さんが、医務室の中まで転がっていった竹筒を拾っているのが見えた。
「ありがとう、伏木蔵くん。それじゃ、用は済んだからここで失礼するよ」
そう言って、わざわざ屋根裏から帰っていった。
この人の考えていることは、なんだかよくわからない。
三人揃って呆然としていると、「何やってんだ、お前ら」と半分呆れ顔の食満留三郎先輩がやって来た。
「あ、留三郎!」
「聞いたか伊作、あの任務の件――」
「あぁ。今さっき学園長先生から通達があったよ」
「そうか。あぁ、それでAも……」
二人分の視線がこちらへ集まる。
何故、私の名前が出てくるのだろう。
「あ……あの、そういえば、伊作先輩さっきなにか言いかけてた気がするんですけど」
「そう、そのことなんだ」
「これ、一枚はAちゃん宛だったみたいだよ」
私宛? 最近は怒られるようなことはしていないはず。
……あ、この間のテストの点数が悪すぎた件だろうか。
それを、伊作先輩に見られた――あ、ものすっごく恥ずかしい。今だけは、綾部喜八郎の落とし穴に入りたいと切実に思う。
「任務の知らせだって。しかも、僕達二人と一緒に、タソガレドキ城が最近作った出城への潜入」
どうやら、私は夢を見ているらしい。……いや、夢にしては鮮明すぎる。
「A、落第しそうって聞いてたのにこんな任務が来るなんて、すごいじゃないか!頑張ろうな!」
現実ならば、あまりに成績が悪い私への嫌がらせ、壮大ないたずら――だろうか。
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廬。(プロフ) - 最高です……どうか続編頑張ってください……!! (2019年11月1日 13時) (レス) id: af811dac15 (このIDを非表示/違反報告)
鹿子木(プロフ) - ありがとうございます。ご馳走様でした。これからも頑張って下さい。 (2018年10月3日 4時) (レス) id: d5c9836270 (このIDを非表示/違反報告)
よしのや(プロフ) - 妖狐の巴衛さん» そのセリフは雑渡さんの発言になります!! まだまだ小説初心者ゆえ、表現が拙く分かりづらくて申し訳ないですm(_ _)m コメントありがとうございました!! (2018年6月17日 23時) (レス) id: 7e36950532 (このIDを非表示/違反報告)
妖狐の巴衛(プロフ) - 「……尊奈門、忍術学園の忍たまだ」は誰がかけた言葉なんですか? (2018年6月17日 21時) (レス) id: 2ff3e29f1d (このIDを非表示/違反報告)
よしのや(プロフ) - サラさん» ありがとうございます!! そう言っていただけると、すっごく励みになります(=´▽`=) (2018年4月5日 22時) (レス) id: 5bb94c3c23 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:よしのや | 作成日時:2018年3月27日 20時