弐拾壱 室町の食べ○グ ページ31
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遂にやってきた、その日。
授業後に課せられてしまった補習も高速で終わらせ、驚きの表情を浮かべる先生を横目に教室を後にする。
「失礼しまーす」
医務室には、既に伊作先輩と雑渡さんがいた。
久しぶりに見る、雑渡さんの姿。
「A! どうしたの、また怪我でも……」
「いえ、雑渡さんに用事が……って、今月はまだ一回も怪我してないですよ!?」
「あははは、ごめんごめん」
「久しぶりだね、Aちゃん」
雑渡さんに名前を呼ばれ、心臓が飛び跳ねそうなくらい高鳴る。
高鳴る? あれ、なんだろうこの感じ。
「あのっ、この間はご迷惑をお掛けして、申し訳ありませんでした……
あっ、これ、よかったらタソガレドキ忍軍の皆さんでどうぞ……!」
驚く雑渡さん。一方、伊作先輩は興味深そうに包を見つめ、口を開いた。
「それ、もしかして最近流行っている和菓子屋の煎餅かい?」
「はい! 伊作先輩も行かれたことありますか?」
「いや、丁度行きたいと思っていたところなんだ!
文次郎達が昨日行ったみたいでね、買ってきてくれたお土産の団子がすごく美味しかったから……」
伊作先輩は表情を緩めながら、雑渡さんはご存知でしたか?と言葉を続けた。
「ああ、よく知っている。
……だが、あの周辺へはあまり近寄らないほうがいい」
え、という伊作先輩と私の声が重なる。
「悪い噂……とでも言おうか。
町の方では男女で食べると結ばれる煎餅、なんて噂のが流行しているようだがな」
悪い噂――?
というか、雑渡さんもあの噂知っていたのか。
わざわざ煎餅選んでしまって、ちょっと恥ずかしい。いや別に美味しいって評判を聞いたからってだけで、他意はないんだけれど……!
「あはは、評判の店につく悪評なんて、きっと客を取られた店が流しているものですよ!」
「あっ、伊作先輩、道わかりますか? よければ私、道案内がてら着いていきますよ!」
「本当!? じゃあ道案内、お願いしてもいいかな。そうだ、留三郎も行きたいって言ってたなぁ」
「じゃあ三人で行きましょう!」
横から、雑渡さんの大きな溜息が聞こえた。
「まぁ兎に角……安全な道を通って、日が暮れるまでには帰りなさい。
煎餅ありがたく頂くよ。それじゃ」
がたん、と音がして、呆気にとられているうちに雑渡さんは屋根裏へと消えていった。
もっと話したかったけど……忙しい方だから、しょうがないか。
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廬。(プロフ) - 最高です……どうか続編頑張ってください……!! (2019年11月1日 13時) (レス) id: af811dac15 (このIDを非表示/違反報告)
鹿子木(プロフ) - ありがとうございます。ご馳走様でした。これからも頑張って下さい。 (2018年10月3日 4時) (レス) id: d5c9836270 (このIDを非表示/違反報告)
よしのや(プロフ) - 妖狐の巴衛さん» そのセリフは雑渡さんの発言になります!! まだまだ小説初心者ゆえ、表現が拙く分かりづらくて申し訳ないですm(_ _)m コメントありがとうございました!! (2018年6月17日 23時) (レス) id: 7e36950532 (このIDを非表示/違反報告)
妖狐の巴衛(プロフ) - 「……尊奈門、忍術学園の忍たまだ」は誰がかけた言葉なんですか? (2018年6月17日 21時) (レス) id: 2ff3e29f1d (このIDを非表示/違反報告)
よしのや(プロフ) - サラさん» ありがとうございます!! そう言っていただけると、すっごく励みになります(=´▽`=) (2018年4月5日 22時) (レス) id: 5bb94c3c23 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:よしのや | 作成日時:2018年3月27日 20時