8. 野良猫 ページ25
※ 組頭の視点 ※
ここはタソガレドキ城の中でも、日差しがよく入って暖かい、とてもいい部屋だ。
……が、しかし今はそんなことを言ってる場合ではないらしい。
「……Aちゃん」
「なんですか」
「ああ、いや……やることなくて、暇だなあって」
「そうですか。……突然現れてそんなこと言い出すなんて、タソガレドキの忍者隊って暇なんですね、平和な世の中だなぁ」
「うん、なかなか鋭いねえ」
大した進展もないまま、Aちゃんが忍術学園へ帰る日が来た。
……いや、大した進展というか、これ以上の関係を望んでいるわけでは決してないのだけれど。
あれからずっとこんな調子だ。私も、Aちゃんも。
「なんか怒っているのか」
「別に」
荷物を纏めているAちゃんの横顔は、悲しそうでもあり、怒っているようにも見える。
「じゃあ、なんでそんな顔をしている」
「……何故、私に構うんですか」
顔を上げ、久しぶりに目を合わせてくれたAちゃんのいつになく不満そうな表情を見て、初めて――いや、二回目に会った時のことを思い出した。
やっぱり、浮かぶ感情はあの時と全く一緒だ。
「可愛いから」
「……は?」
若干引き気味なAちゃんの顔に、少しばかり後悔する。
「……道端の野良猫じゃあるまいし、そんな理由で構わないでください」
少し、Aちゃんの表情が綻んだ気がした。
「そうだな、しかし……
野良猫には嫌われても仕方ないが、君にはなんとしても嫌われたくない。理由は、それじゃだめか?」
勢いに任せた感じはするが、割と格好つけたつもりだった。
これが、私の本心だ。届いてくれ……
「嫌われたくない……? 私から情報を聞き出すために、ですか」
返ってきたのは、予想外の言葉だった。
「……どういうことだ」
「私のことをお調べになったんだから、知っているはずですよね? 私の両親が、抜け忍だってこと」
いつの間にかAちゃんは、冷たい表情でこちらを睨みつけていた。
どうしてこうもうまく行かないんだろうか。
君にだけは嫌われたくなかった。
こんな感情、いつ以来だ……もう、覚えていない。
143人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
廬。(プロフ) - 最高です……どうか続編頑張ってください……!! (2019年11月1日 13時) (レス) id: af811dac15 (このIDを非表示/違反報告)
鹿子木(プロフ) - ありがとうございます。ご馳走様でした。これからも頑張って下さい。 (2018年10月3日 4時) (レス) id: d5c9836270 (このIDを非表示/違反報告)
よしのや(プロフ) - 妖狐の巴衛さん» そのセリフは雑渡さんの発言になります!! まだまだ小説初心者ゆえ、表現が拙く分かりづらくて申し訳ないですm(_ _)m コメントありがとうございました!! (2018年6月17日 23時) (レス) id: 7e36950532 (このIDを非表示/違反報告)
妖狐の巴衛(プロフ) - 「……尊奈門、忍術学園の忍たまだ」は誰がかけた言葉なんですか? (2018年6月17日 21時) (レス) id: 2ff3e29f1d (このIDを非表示/違反報告)
よしのや(プロフ) - サラさん» ありがとうございます!! そう言っていただけると、すっごく励みになります(=´▽`=) (2018年4月5日 22時) (レス) id: 5bb94c3c23 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:よしのや | 作成日時:2018年3月27日 20時