7. 曖昧すぎる ページ24
※ 拾伍〜 組頭の目線 ※
「……と、いうことだ。今後どうするか、検討しなければ」
「周囲に知られれば、狙われる危険性があります。何しろあの城の関係ですから……」
「彼女から情報を引き出すことは?」
「……あの家に関しては何も知らないようだ、近所に住む人間のほうが遥かに情報源となる」
日が沈み、虫の羽音が響くほどの静けさと闇につつまれた。
足を揃えて座る私を横目に、尊奈門がため息をつく。
「結局、組頭は何がしたいんですか」
「ん?」
尊奈門は口布を外しつつ声を潜めた。
「Aさんのことですよ。私情を挟んでいるのか、単に忍術学園の生徒だからなのか」
「どっちも、かな〜」
「またそうやって曖昧な答えを……」
「いや、自分でもよくわからないんだよ。
――しょせんそんなもん、じゃないか?」
「……もろいずみそんなもん、です」
「今のは名前のことじゃないぞ」
「わかってますよ!!
本っ当に、私をからかうのがお好きなようで……」
他人の心を読まねばならない忍びが、自分の心もわからないとは情けない。
こんなに気になるのはやはり、好意を持っているのだ――ということを、認めたくない自分があるのだろう。
いっそのこと、相手の方から好意を持ってくれればいいのに……
そう考えるのはとても浅はかで自己中心的で、自分でも嫌気が差してくる。
翌朝、約束どおり迎えに来た。
屋根裏から入ろうとして、天井にいくつかの穴が空いていることに気づく。それは、過去この家に忍びが入った証だ。
最後に会ってから半日と少ししか経っていないというのに、Aちゃんはまるで別人のようになっていた。
ひどく疲れた顔と目の下にある隈は、見ているこちらが痛々しくなる。
「強い人というのは、こういう時に泣かない人をいうのでしょうか」
「……さあ
Aちゃんがそう思うのなら、そうなんじゃないか」
「……なんですか、それ」
少し会話を交したが、声に以前のような生気がない。
深い絶望に飲み込まれ、今にも感情が消えてしまいそうな表情。
今まで、深く傷付き心が枯れゆく人間を幾多と見てきたが、何故かAちゃんを見ていると、今まで以上に酷く、悲しくなってくる。
「走るぞ」
Aちゃんは、一時的にタソガレドキ城で匿うになった。
様々な城から狙われることとなった今、人の出入りが多い忍術学園は非常に危険な場所だからだ。
143人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
廬。(プロフ) - 最高です……どうか続編頑張ってください……!! (2019年11月1日 13時) (レス) id: af811dac15 (このIDを非表示/違反報告)
鹿子木(プロフ) - ありがとうございます。ご馳走様でした。これからも頑張って下さい。 (2018年10月3日 4時) (レス) id: d5c9836270 (このIDを非表示/違反報告)
よしのや(プロフ) - 妖狐の巴衛さん» そのセリフは雑渡さんの発言になります!! まだまだ小説初心者ゆえ、表現が拙く分かりづらくて申し訳ないですm(_ _)m コメントありがとうございました!! (2018年6月17日 23時) (レス) id: 7e36950532 (このIDを非表示/違反報告)
妖狐の巴衛(プロフ) - 「……尊奈門、忍術学園の忍たまだ」は誰がかけた言葉なんですか? (2018年6月17日 21時) (レス) id: 2ff3e29f1d (このIDを非表示/違反報告)
よしのや(プロフ) - サラさん» ありがとうございます!! そう言っていただけると、すっごく励みになります(=´▽`=) (2018年4月5日 22時) (レス) id: 5bb94c3c23 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:よしのや | 作成日時:2018年3月27日 20時