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2. 呼ぶ名前 ページ12

※ 漆〜拾 組頭の視点 ※





 出城の入り口には、立派な椿が咲いていた。

「黄昏甚兵衛様がいらっしゃったぞ‼‼ 控えおろう‼‼」

「殿‼ ようこそいらっしゃいました‼‼」


 突然の訪問に驚き、床にひれ伏す出城の人々の中から、横目でAさんを探す。

「殿、夕食はどうされますか」

 私の声にふと顔をあげた女中がいた。

 ――あ、見つけた。


「……この方は?」
 知らないふりをして尋ねる。

「はい、先週から女中として雇っている、『椿』という奴です。皿を割ったり箒を折ったり、とにかく間抜けな奴でして……」

「『椿』、ねぇ……」

 嘲笑うように『椿』さんを見下ろす。


 どこから名前を考えたのだろうか。
 もしかして、この出城の入り口にあった椿の花、か?




「そういえば、ここらで敵がうろついているようです。……出城の存在はもう広まっているようなので。この出城も、警備の強化をお願いしたい。先程、城の周りの見張りを部下に任せました」

 それを聞くと、『椿』さんは真っ青になり突然「ちょぅっと、厠いってきまっ、」と、あからさまに動揺した口調で叫んだ。



「おい、殿の御前で無礼な!」と料理人が叱るのは、おそらく耳に届いていないだろう。


「私も尊奈門が心配なので、見に行って参ります。料理人、殿の夕食のご用意を」



 建物の影から裏口をそっと覗くと、ちょうどAさんが外へ合図を出そうとしているところだった。

「何者だっ」

 尊奈門にしては、早く見つけることができたじゃないか。後で褒めてやろう。


 思わず動きが固まるAさんを見て、こんなのでくノ一やっていけるのか、と少し心配になる。

 怪我をさせては保健委員さんに怒られてしまうので、今回ばかりは助けることにした。




「君に怪我させたら、忍術学園の保健委員さんに怒られてしまうからね」









「――君、なんで自分がタソガレドキ出城の調査任務を任されたか、わかるか?
 タソガレドキが、裏で手を回したからだよ」



 何を言っているのかわからない、といった様子だ。それもそうだろう。









「そういえば名前、なんて呼べばいいか聞いてなかったね」






「……Aちゃん、は」

「……別に、いいんじゃないですか」

 少し、Aちゃんとの距離が近づいた気がした。




 Aちゃん。

 私はその名前を、これから何度も呼ぶこととなる。

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廬。(プロフ) - 最高です……どうか続編頑張ってください……!! (2019年11月1日 13時) (レス) id: af811dac15 (このIDを非表示/違反報告)
鹿子木(プロフ) - ありがとうございます。ご馳走様でした。これからも頑張って下さい。 (2018年10月3日 4時) (レス) id: d5c9836270 (このIDを非表示/違反報告)
よしのや(プロフ) - 妖狐の巴衛さん» そのセリフは雑渡さんの発言になります!! まだまだ小説初心者ゆえ、表現が拙く分かりづらくて申し訳ないですm(_ _)m コメントありがとうございました!! (2018年6月17日 23時) (レス) id: 7e36950532 (このIDを非表示/違反報告)
妖狐の巴衛(プロフ) - 「……尊奈門、忍術学園の忍たまだ」は誰がかけた言葉なんですか? (2018年6月17日 21時) (レス) id: 2ff3e29f1d (このIDを非表示/違反報告)
よしのや(プロフ) - サラさん» ありがとうございます!! そう言っていただけると、すっごく励みになります(=´▽`=) (2018年4月5日 22時) (レス) id: 5bb94c3c23 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:よしのや | 作成日時:2018年3月27日 20時

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