結婚前夜【緑谷出久】 (ページ10)

今日:1 hit、昨日:7 hit、合計:52,566 hit

10夜ページ10

「何？」

「彼、僕らの婚約祝いをしたいんだって。
それで飲みに行こうって誘われて。
真衣ちゃん、空いてる日有る？」

「嬉しい！
いつでも大丈夫だよ。
出久くんの・・・デクの事務所はホワイトだから、融通利くし。
デクとショートの方が忙しいでしょ？
私が2人に合わせる」

「分かった。
うーん・・・轟くんは来週の火曜の午後が平気って言ってた気がする。
だから多分、そこになるかな。
僕もその日の18時以降は平気だから。
彼に確認しておくね」

それから食事を終え中華料理店を出ると、僕たちは婦人靴売り場に足を運んだ。

2人並んで、明日着て行く服にどれが合うか品定めをする。

検討の結果、爪先部分に丸みを帯びた白いハイヒールになった。

僕はそれを持って会計を済ませると、真衣ちゃんに手渡す。

「ありがとう、プレゼントしてもらって」

「次はアクセサリーでも見に行く？」

「ううん、大丈夫。
・・・でも、帰る前にハピネス・ロードを歩きたいかな」

「真衣ちゃんが行きたいなら」

僕たちはショッピングセンターを出て1キロほど歩き、ハピネス・ロードへ向かった。

昼間でも、そこには多くの恋人たちがいた。

そう言った言葉とは裏腹に、難しい顔をする真衣ちゃん。

「大丈夫だよ、真衣ちゃん。
僕の両親は、値踏みするように人を見ないから。
・・・そうだ！
これから買い物に行かない？
明日履いて行く靴とか見に行こう。
その方が気が紛れるかもしれないし」

「うん・・・」

「私じゃまだ幼いとか言われない？
私今23だから、出久くんと4つも違う」

「たった4歳だよ？」

「あ、この前と話してることが違う。
依子と話してる時、4歳差は大きいって言ってなかった？」

「それはそれ、これはこれ」

「なにそれ」

真衣ちゃんはクスクス笑った。

僕もつられて笑う。

「とにかく、会えばわかるよ。
そんな畏まらなくっていい人だって。
優しいよ、僕の母は」

「明日、私が変なことを口にしたら、すぐ注意してね。
本当に狼狽して、右手と右足が同時に出るかもしれないから」

「大丈夫、その不安も母に対面するまでだよ。
話し始めたらすぐ打ち解けてる筈。
真衣ちゃんと僕のお母さん、馬が合いそうだし」

「そうだといいんだけど・・・」

向こうから親子3人連れが歩いて来る。