結婚前夜【緑谷出久】 (ページ6)

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「でも、あんまり考え過ぎない方が良いんじゃない？」

今まで黙っていた真衣ちゃんが口を開く。

「駆け引きよりも、自分らしさを出して勝負した方が良いと思うけど・・・」

「それが1番良いんだけどさ。
でも、そこまで自分に自信がないというか・・・。
真衣は駆け引き、したことないの？」

真衣ちゃんはその問いにはすぐに答えず、僕と羽瀬川さんの顔を交互に見る。

「それは・・・ちょっとはあるけど」

あるんだ。

「ほら、あるじゃん！
みんな大なり小なりやってるのよ、恋の駆け引き」

その言葉を話の締めにしたように、店員が僕たちの食べ終えた器を下げに来た。

「デク。
結婚式はジューン・ブライドですか？」

「真衣ちゃんが6月が良いなら」

僕は真衣ちゃんを見る。

「私はそういうのに拘りがないから、何月でも良いよ」

これは僕にとって朗報だった。

今は9月だから、真衣ちゃんが『結婚式は6月が良い』と言ったなら、年内はかなり慌ただしく動かなければならない。

僕としては、来年の9月か10月なら余裕を持って物事を進めていけるので、好都合と思っていた。

「挙式の場所は海外と国内、どちらが理想ですか？」

この質問に、僕と真衣ちゃんは顔を見合わせた。

「今は海外での挙式も流行ってるから、真衣ちゃんが日本以外で挙げたいなら、僕はそれに従うよ。
真衣ちゃんが喜ぶ顔を見れるのが1番良い」

「私は、普通に国内の式場が良いな。
派手なのは似合わないし」

彼女の答えに、羽瀬川さんは否定的な表情だ。

「ハワイの綺麗な海をバックにしてウエディングドレスを着ている姿とか、かなり映えると思うけど。
私の友達が去年ハワイで挙式したんだけど、人生で最高の思い出が出来たって感涙してた。
今じゃハワイで挙式する日本人って、年間2万組以上とか言われてるし」

僕は横目で真衣ちゃんを見る。

羽瀬川さんの言葉に真衣ちゃんがはにかんでいるところを見ると〝満更でもない〟ということか。

まあ確かに、真衣ちゃんのウエディングドレス姿とハワイの真っ青な海は、写真に美麗に収まるだろう。

目を瞑って想像してみると、それを生で見たいという思いも生まれた。

家に帰ったら、ハワイを含めた海外での挙式プランも調べておいた方が良さそうだ。