結婚前夜【緑谷出久】 (ページ17)

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17夜ページ17

「これは出久くんのせいじゃなくて、制度の問題よね。
誤解のないように言っておくけど、緑谷姓になるのはとても嬉しく思ってるんだから」

「うん、分かってるよ」

僕たちは昼食をとるため、市役所近くにある洒落たレストランに入った。

いつも食べている店に比べれば割高だけれど、婚姻届を出した記念日である。

少しくらい、奮発しても良いだろう。

僕たちは窓際の席に座り、それぞれ好みの料理を注文した。

今は4月。

新たな出発にはうってつけの月ということで、僕と真衣ちゃんは今日、婚姻届を提出した。

周りに話を聞くと、結婚式の直前・直後に婚姻届を出すのが最も多いらしい。

しかし手間がかかる通帳等の名義変更はなるべく早く済ませておいた方が良い。

そして僕の身に万が一が起きた時に処置をどうするか真衣ちゃんが選択できるよう、結婚式を前に正式に夫婦になった。

新居も既に決まっており、来週の土曜日に2人で新たなマンションに引っ越すことになっている。

僕と真衣ちゃんが注文した料理が、同時に運ばれてきた。

料金は高いけれど、それに見合った高級な味だ。

「明日から暫くは、少し忙しくなるかもしれないな」

「どうして？」

「メディアに結婚したことを公表するから。
こんな僕でも、一応ヒーローだからね。
多少はメディアから質問が来ると思うんだ」

「そっか。
・・・私のせいで、デクの人気が下がらないかな」

「うーん、たぶん大丈夫だと思うけどな。
たしかにヒーローは人気商売なとこあるけど、1番大切なのは、人のピンチを救うことだし。
僕はそれができれば気にしないよ」

「・・・出久くんらしい答えだね」

真衣ちゃんは、ふわりと笑った。

夜は事務所の皆んなや仲間のヒーロー達が、僕たちの門出を盛大に祝ってくれた。

真衣ちゃんは先輩から夫の操縦方法を伝授され、僕は先輩ヒーローから、夫婦円満の秘訣を教わった。

みんなが本当に祝福してくれる中での宴だったので、最近は忙しくてゆっくり飲めなかった酒をたんと楽しんだ。

宴が終わって店を出る時、後輩の女の子たちが「やっぱり結婚って良いですね」と口にしていた。

僕もそう思う。

「このまま帰る？」

店の前でみんなと別れた後、僕は真衣ちゃんに尋ねる。

彼女は少し考える様子を見せた後、ゆっくり口にした。